大阪民泊トラブル急増:吉村知事の推進路線に急ブレーキ

大阪で「民泊」を巡るトラブルが深刻化している。全国の特区民泊の9割以上が集中する大阪だが、そのトラブル多発を受け、かつて民泊推進の旗を振った大阪維新の会も、方針転換を迫られている。一体、大阪で何が起きているのだろうか。この問題は、外国人観光客増加による宿泊ニーズと、近隣住民の生活環境保護のバランスが問われる、喫緊の社会課題となっている。

「儲かる」はずがクレームの嵐:現場の声

大阪・ミナミで不動産管理会社を経営するA社長は、「最初は儲かると思って民泊に参入したが、これほどクレームが多いとは予想外だった」と顔を曇らせる。社長が見せてくれたタブレットには、「クレーム処理」と題された一覧があり、過去3年間で対応した民泊関連のクレームが優に1000件を超えていた。そのほとんどが、民泊を利用する外国人観光客に関するものだという。

具体的なトラブル事例は枚挙にいとまがない。

  • 「スーツケース7つを民泊マンションの廊下に放置され、通行の邪魔になった」
  • 「2週間宿泊した4人家族の退室後、部屋はまるでゴミ屋敷。清掃とゴミ出しで丸2日を要した上、部屋のシャワートイレがなくなっており、盗難の可能性も。さらに、エアコンが故障して業者を呼ぶと、配線が切られており盗もうとした形跡があった」
  • 「宿泊者は3人なのに、実際には8〜9人が滞在し、深夜まで大騒ぎ。近隣住民が注意すると喧嘩になった」
  • 「ベランダでバーベキューをして煙がもくもくと立ち込め、他の入居者から火事ではないかと連絡が入った」

大阪での民泊推進に尽力してきた大阪維新の会代表、吉村洋文大阪府知事が会見で話す様子。増え続ける民泊トラブルへの対応が注目される。大阪での民泊推進に尽力してきた大阪維新の会代表、吉村洋文大阪府知事が会見で話す様子。増え続ける民泊トラブルへの対応が注目される。

なぜ大阪に特区民泊が集中するのか

自宅やマンションの空き部屋を旅行者などに提供する「民泊」は、訪日外国人観光客の急増による宿泊施設不足に対応するため、国によって制度化が進められてきた。通常の民泊が年間180日以内の営業日数制限があるのに対し、国家戦略特区制度を活用した「特区民泊」には日数制限がないのが特徴だ。東京都大田区に続いて大阪府や大阪市などがこの制度を導入したが、特区民泊は大阪に極端に集中しており、全国の約95%を占めるため、それに伴いトラブルも急増している。

A社長は、大阪に民泊が集中する理由として、主に二つの点を挙げる。一つは、大阪圏には観光地や飲食店が豊富に存在し、京都、神戸、奈良といった主要な観光地へのアクセスも電車やバスでスムーズという地理的利便性の高さだ。さらに、2025年の大阪・関西万博開催が決定し、今後も外国人観光客のさらなる増加が見込まれていることも、その傾向を後押ししている。

大阪府と大阪市は、大田区に次ぐ形で2016年までに「特区民泊」制度を導入し、急増する外国人観光客の宿泊ニーズに積極的に対応してきた。しかし、その背景には、単なる観光需要への対応だけでなく、さらに深い思惑があったとA社長は指摘する。

課題解決に向けた転換点

大阪における民泊は、経済活性化の一翼を担う一方で、地域住民の生活環境悪化という深刻な負の側面を露呈している。当初、経済効果を期待し推進してきた大阪維新の会や吉村洋文大阪府知事も、増え続ける近隣トラブルや社会問題に対応するため、その方針を見直す時期に差し掛かっている。持続可能な観光と共生社会の実現に向け、民泊事業のあり方、規制強化、そして利用者と住民双方への啓発が、今後の重要な課題となるだろう。

参考文献