【ブリュッセル=三井美奈】英総選挙での保守党勝利を受け、欧州連合(EU)のミシェル大統領は13日、「英議会が早急に離脱協定案を承認するよう期待する」と述べた。同日のEU首脳会議は1月末の英国のEU離脱を視野に、英国との新たな自由貿易協定(FTA)交渉に向けて結束を確認した。
FTA交渉に向けて、ミシェル氏は「われわれには用意ができている。EU単一市場を守り、双方が公平なルールで将来関係を築くことが重要」だと訴えた。首脳会議では「秩序ある離脱」を目指す方針を確認する。オランダのルッテ首相は、「移行期間」が終わる2020年末までのFTA合意は、「非常に期間が短く、難しい課題だ」と述べた。
EUでは1月末の離脱への道筋がついたことに、安堵(あんど)が広がる一方、「英なしEU」への不安も出た。チェコのバビシュ首相は、「ジョンソン氏には大きな勝利になったが、英国の離脱は欧州にとって悪いニュースだ」と述べた。
「移行期間」ではFTA交渉にともない、EUのデータ保護規制や温暖化対策ルールの扱いも課題となる。ブルトン欧州委員(域内市場担当)は13日に仏ラジオで、「英国との交渉は非常に複雑なものになる。通商については、EU水準の環境、社会政策ルールを適用することが重要だ」と主張した。ジョンソン氏の提案で離脱協定案に盛り込まれた北アイルランド条項に沿って、新たな税関手続き設備のあり方も交渉の課題となる。
EU側は、英国の離脱を担当したバルニエ首席交渉官が、引き続きFTA交渉を担う。移行期間は英、EU双方の合意があれば延長は可能だが、ジョンソン氏は選挙期間中、「延期はしない」と公約した。