トランプ発言が浮き彫りにする「慰安婦問題」の複雑さと歴史認識

クォン・キム・ヒョニョン|女性現実研究所所長

クォン・キム・ヒョニョン女性現実研究所所長が慰安婦問題に関するトランプ発言を分析クォン・キム・ヒョニョン女性現実研究所所長が慰安婦問題に関するトランプ発言を分析

先日、ホワイトハウスで行われた日米韓首脳会談において、ドナルド・トランプ米国大統領が「慰安婦問題」について言及し、議論を呼んでいます。トランプ大統領は「日本は前に進みたがっているのに、韓国はこれに執着している」と発言し、これに対し、李在明(イ・ジェミョン)韓国大統領は「事前に日本と会い、大統領が心配している問題は全て整理した」と応じました。この短いやり取りから、以下の三つの重要な点が浮かび上がります。第一に、トランプ大統領がこの問題を「Comfort Women」と表現したこと。第二に、韓日間の不和の原因として韓国が問題に「執着」していると指摘されたこと。そして第三に、李在明大統領が会談前にこの問題を「整理した」と回答したことです。これらの発言は、日本軍「慰安婦」問題の国際的な認識、言葉の持つ力、そして政治的解決の限界について深く考える機会を与えています。

「Comfort Women」という表現の再考:加害者の視点

まず、トランプ大統領が用いた「Comfort Women」という言葉について掘り下げてみましょう。この表現は、加害国である日本によって名付けられた婉曲語法であり、その歴史的背景から国際社会では慎重な使用が求められています。国際社会における日本軍「慰安婦」問題の認識は、単なる戦時性売買ではなく、国家が制度的に動員・管理した「制度的な性奴隷システム」として捉えられています。

1998年に発表された第5回国連人権委員会差別防止・少数者保護小委員会によるゲイ・マクドゥーガル特別報告者の報告書では、「Comfort Women」は加害者の視点から叙述された遠回しな言い方であると明確に指摘されており、この問題は「武力紛争下の制度化された強姦、性奴隷制および奴隷制類似慣行」(systematic rape, sexual slavery and slavery-like practices during armed conflict)と定義されています。つまり、「戦時性奴隷」こそが、その本質を正確に表す言葉なのです。

しかし、被害当事者の中には、この言葉を自らに課すことを拒んだり、深い苦痛を感じたりする方もいます。そのため、現在では「慰安婦」という言葉を用いる際には、引用符を付すことで、この命名に同意しないという立場を示すことが一般的です。これは、当事者たちの心の苦しみを理解し、向き合う中で生まれた倫理的な配慮であり、書き言葉だけでなく、話し言葉でも引用符の手振りを示すことがあります。

トランプ大統領がこの単語を発した際、引用符を示す手振りはなかったと報じられています。彼のこれまでの言動から、人権やジェンダーに対する意識に高い期待を抱くことは難しいかもしれません。しかし、彼の発言は、複雑な歴史的背景を持つ「慰安婦問題」が、いかに単純化され、その本質が見過ごされやすいかという現実を改めて浮き彫りにしました。因果関係の説明を省き、自らが望むことだけを単語中心に繰り返すトランプ氏の単純な発話は、無意識のうちに加害者の立場を擁護する方向へと傾きかねない危険性をはらんでいます。

「執着」か「固着」か:韓国に対する認識と言葉の力

トランプ大統領は、韓日間の「不和」の原因が韓国にあるとし、「fixated on」や「stuck」といった言葉で、日本が前に進みたがっているのに対し、韓国はそうではないと表現しました。これらはいずれも固定され、動けない状態を意味する言葉です。韓国メディアではこれらの単語を「執着」と翻訳しましたが、この翻訳には微妙なニュアンスの違いと、それがもたらす影響が存在します。

「固着」が、どうすることもできずに動けない状態そのものを客観的に表現するのに対し、「執着」は忘れられずにしがみつく、より感情的で主観的な状態を指します。被害者の立場からすれば、「執着」という言葉は加害者と被害者の位置を入れ替え、まるで被害者側に問題があるかのように聞こえてしまう可能性があります。一方、「固着」であれば、現在の政治的な難しさや膠着状態をより客観的に描写することができます。

なぜ「固着」の方がより適切であるにもかかわらず、「執着」という言葉が選ばれたのか。それはおそらく、より簡単で単純な言葉であったためだと推測されます。簡単な言葉は、より多くの人々に理解されやすいと考えられがちですが、時にそれは、簡単には表現できない複雑な状況や、それを伝えようとする倫理的・政治的な苦闘を無意味なものにしてしまいます。この言葉選びの背後には、問題の根源を韓国の「感情的な固執」に帰することで、加害者側の責任を曖昧にし、現状を単純化しようとする意図が読み取れるかもしれません。

李在明大統領の発言とその影響:置き去りにされる人々

李在明大統領が会談の席で、トランプ大統領の誤った表現を修正したり反論したりすべきだった、という議論はここではしません。李大統領は「事前に日本と会い、大統領が心配している問題を全て整理した」と述べました。これほどの発言にもかかわらず、多くの人々がその場で羞恥心や屈辱感を感じなかったのは、彼の発言が「実用主義」や「中道保守」といった政治的フレームの中で、あるいは「千年続く事大主義外交の『空気の読み方』」として捉えられたからかもしれません。李大統領のキャラクター性が、この状況を突破する力として評価された点には、私も同意します。

しかし、その後に置き去りにされた人々が存在します。日本軍「慰安婦」問題を本当に心配しているのは、トランプ大統領ではなく、苦しんできた被害者の方々と、彼女たちを支援し続けている人々です。彼らが問題に固着したり、そこから動けずにいるのではなく、むしろ政治が彼らを顧みず、置き去りにしていってしまうのです。私は何よりもこの状況に深い懸念を抱いています。歴史の真実と人権の問題は、政治的駆け引きの中で安易に「整理」されるべきものではありません。

参考文献