奥田民生、お金と幸福の哲学:「59-60」が語る人生の価値観

2025年、60歳を迎えるロックミュージシャン奥田民生氏。彼の10年ぶりの著書『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』では、独自の視点から「心の持ち方」や「生きるヒント」が紹介されています。NHK「鶴瓶の家族に乾杯」や吉川晃司氏との新ユニット「Ooochie Koochie」でも話題の奥田氏が、これまでどのように働き、周囲と関係を築き、そしてお金と幸せの価値観をどう捉えてきたのか。その人生哲学を紐解きます。

ステージでギターを演奏する奥田民生。彼の音楽と人生哲学を象徴する一枚ステージでギターを演奏する奥田民生。彼の音楽と人生哲学を象徴する一枚

「世の中、何をするにもお金が必要」という現実

現代社会において、お金は生活のあらゆる側面に不可欠です。趣味の活動、食事、衣服の購入など、私たちは日々の暮らしの中で様々な場面でお金を使います。しかし、「どれくらいの金額があれば十分か」という問いに対する答えは、まさに人それぞれであり、個人の価値観によって大きく異なります。奥田氏もこの現実を認めつつ、自身にとっての「十分」を探求しています。

音楽と趣味に「いくらあれば幸せか」?

奥田氏のお金に対するユニークな視点は、自身の趣味である音楽活動に明確に表れています。もし今、3000万円が必要か問われれば、彼にとってそれは過剰な金額だと言います。高級車ランボルギーニに興味はなく、せいぜい100万円あれば十分に事足りるとのこと。この100万円という金額は、彼が音楽機材や楽器を購入するのに必要な目安であり、それさえも最近はあまり購入していないと語ります。これは、彼にとっての幸福が、必ずしも高額な消費に結びつかないことを示唆しています。

幸せを感じる「お金の使い方」とは

高価なものばかりを追い求めるわけではない奥田氏ですが、最近、福岡で4万円のベースを衝動買いしたエピソードを明かしています。ピンク色のシンプルなベースではあったものの、これが非常に良かったとのこと。お金の価値は金額そのものではなく、その使い方や、そこから得られる満足度にあると彼は指摘します。このように、ささやかな買い物から得られる喜びこそが、案外本当の幸せに繋がるのかもしれません。

「高価=良質」ではないという信念

奥田氏は、「値段が高ければ良いものだ」という固定観念に縛られない生き方を貫いています。彼は昔からランボルギーニよりもカマロを好み、これまでに購入した最も高価なものでも、ユニコーン時代に手に入れたギブソン・レスポール59(当時450万円)だと語ります。このギターは現在、家の購入費用に匹敵するほどの高値に跳ね上がっていますが、奥田氏がこれを購入したのは純粋な音楽的欲求からであり、投資目的ではなかったと強調します。彼のお金に対する考え方は、本質的な価値を見抜く洞察力に富んでいます。

贅沢品と満足度の非線形な関係

奥田氏の消費に関する哲学は、高額な商品に対する満足度が必ずしも比例しないという点にも及びます。例えば、800万円の車と8000万円の車を比較した場合、価格が10倍だからといって、その満足度が10倍になるわけではないと彼は考えます。もちろん、80万円と800万円では違いがあるかもしれませんが、遊びに使うお金の価値は個人の感性によるところが大きく、一概には決められないという結論に至ります。彼の人生観は、物質的な豊かさだけでなく、精神的な幸福を追求する姿勢を教えてくれます。

本稿は奥田民生『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』からの抜粋記事です。

参考文献

  • 奥田民生. (2025). 『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』. ダイヤモンド社.