伊東市長不信任決議が可決:学歴詐称疑惑で揺れる市政、今後の展開は?

静岡県伊東市の田久保眞紀市長に対する学歴詐称疑惑が深刻化する中、市議会は本日9月1日、定例会にて市長の不信任決議案を可決しました。これに先立ち、8月6日から実施された田久保市長の辞職を求める署名活動では、市民からの署名数が1万筆を超えるなど、市民の関心と不満が噴出しています。この異例の事態を受け、今後どのような動きが想定されるのか、また田久保市長に「起死回生」の手段は残されているのか。地方自治法に詳しい元東京都国分寺市議会議員(3期10年)の三葛敦志弁護士に、専門家の見地から解説を求めました。

不信任決議可決の重み:伊東市議会の判断

地方自治法において、首長に対する不信任の議決は、総議員の3分の2以上が出席し、その出席議員の4分の3以上の賛成という非常に厳しい要件が課されています(地方自治法第178条第3項)。これは、首長の辞職に反対する議員が4分の1より1人でも多ければ成立しない仕組みであり、そのハードルの高さが特徴です。しかし、今回の伊東市議会では、多数派の議員らが足並みをそろえ、全会一致で決議が可決されたことは、極めて異例かつ重大な事態であると言えます。

学歴詐称疑惑で不信任決議が可決された伊東市の田久保眞紀市長学歴詐称疑惑で不信任決議が可決された伊東市の田久保眞紀市長

三葛弁護士は、「決議が成立した場合、首長は辞職するか、あるいは議会を解散するかのいずれかを選択することになります」と説明します。「もし田久保市長が後者を選べば、解散された議会の選挙が行われることになり、その結果として議員たちも落選のリスクを抱えることになります。不信任決議の要件が厳しいのは、議会の多数派が気に入らない首長を安易に辞めさせることができないようにするためです。二元代表制の下、住民の直接選挙によって選ばれた首長を、議会の多数派が容易に失職させることができてしまえば、かえって市政に混乱を招きかねません。」

首長の選択肢:辞職か、議会解散か、そしてその先に

一般的に、議員の立場から見ると、不信任決議という事態は避けたいという思惑が働くものです。三葛弁護士は、「もしも首長が議会を解散すれば、前述の通り、その後の選挙で自身が落選するリスクを負います。また、選挙には多額の費用がかかる上、議員自身も支援者も大変な労力を要します。地方議会において、不信任決議ではなく『問責決議』や『辞職勧告決議』といった形で対応がとられることが多い背景には、そのような事情があると考えられます」と述べ、今回の全会一致での可決がいかに特別な状況であるかを強調しました。

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不信任決議が可決されたにもかかわらず、田久保市長が辞職せず議会を解散する可能性も十分にあります。では、仮に田久保市長が議会を解散し、その後に議員の選挙が行われた場合、どのような展開が予想されるでしょうか。三葛弁護士は以下のように指摘します。「まず、選挙の結果、現状と同じく市長に批判的な議員が過半数を占めた場合、議会は再度、不信任決議を行うことが考えられます。この再度の不信任決議の場合、決議要件が緩和されており、3分の2以上が出席し、出席数の過半数の賛成で成立します。したがって、伊東市議会の定数がそのままの場合、20人のうち7人が欠席しない限り議決は行われ、過半数の賛成により田久保市長は最終的に失職する可能性が非常に高くなります(地方自治法第178条第2項・第3項後段参照)。」

結び:伊東市政の透明性と住民意思の行方

今回の伊東市長に対する不信任決議の可決は、学歴詐称疑惑を巡る市民の不信感と、それに応える市議会の強い意思を示すものです。地方自治法に則り、田久保市長には辞職か議会解散かの選択が迫られますが、いずれの道を選んだとしても、伊東市政は重要な岐路に立たされることになります。透明性の高い市政運営と住民意思の反映が強く求められる中、今後の伊東市政の動向は全国の地方自治にとっても注目される事例となるでしょう。

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