中国で反日映画「南京写真館」が席巻:高まるナショナリズムとプロパガンダの意図

この夏、中国の映画館では日本軍の南京侵略を描いた映画『南京写真館』が記録的な興行収入を上げています。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、この作品を中国共産党による典型的なプロパガンダ娯楽映画と評し、過度な反日感情の煽動がもたらす危険性について警告しています。中国政府は、こうした戦争映画キャンペーンを通じて、国民の愛国心を高め、特定の標的に不満を逸らす狙いがあると指摘されています。

国を挙げての対日戦争映画キャンペーン

中国の映画館では、第二次世界大戦中の対日戦争を題材とした大作が数多く上映されており、観客は立ち上がって国歌を斉唱し、子供たちは涙を流しながら将来兵士になることを誓う光景が広がっています。特に注目されるのは、1937年の日本による南京侵略を描いた『南京写真館』です。この映画は、何万人もの民間人が殺害された南京大虐殺の証拠となる写真を秘密裏に持ち出し、その記録に貢献した中国人の物語を描いています。

中国南西部で行われたインタラクティブな上映会では、兵士に扮した俳優が観客に向かって「日本人は我々の国を破壊し、我々を絶滅させようとしている!それを許すのか?」と叫び、これに対し観客たちは拳を振り上げ「絶対に許さない!」と応じる動画がSNSに投稿されました。さらに、中国国営放送は軍事戦術、戦時歌謡、ソビエト連邦の役割など、対日戦争に関する特別番組を複数回にわたって編成。年末までに各テレビ局が約100本の戦争関連映画を放映する予定だとされています。

中国の映画館に掲示された戦争映画のポスター。『南京写真館』と『東極島』は、反日をテーマとした作品で、この夏の興行収入を席巻している。中国の映画館に掲示された戦争映画のポスター。『南京写真館』と『東極島』は、反日をテーマとした作品で、この夏の興行収入を席巻している。

プロパガンダの裏に潜む狙いと国際関係への影響

こうした大規模なキャンペーンは、中国を「歴史の正しい側」に立つ新たな超大国として世界に示す以上の意味合いを持っています。その一つは、国民の政府への不満を逸らし、政府以外の標的に向けさせることです。ハーバード・ケネディ・スクールで中国を専門とするラナ・ミッター教授は、この状況について次のように指摘しています。

「全体として、愛国的アイデンティティを醸成しようとする強い動きが今起こっています。その多くが『中国は世界からの脅威にさらされている』という考えを植えつけようとするものです」

また教授は、「敵にされる標的は、時とともに変わり得ます。それは米国だったり、日本だったり、あるいはそれほど明確に定義されていない勢力かもしれません」と付け加えており、中国のナショナリズム高揚が特定の国との関係に緊張をもたらす可能性を示唆しています。

結論

中国で記録的なヒットを続ける反日戦争映画『南京写真館』に見られる一連の動きは、単なる娯楽に留まらず、中国政府がナショナリズムを強化し、歴史認識を形成するための強力なプロパガンダツールとして利用している実態を浮き彫りにしています。このキャンペーンは、国内の不満を外部に転嫁し、中国が国際社会において果たすべき役割についての認識を国民に植え付けることを目的としており、日本を含む周辺国との関係に潜在的な緊張をもたらす可能性があると分析されています。

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