中国軍事パレードの衝撃:最新兵器が示す「台湾有事」への野心と日本の課題

今回の中国軍事パレードは、世界の防衛関係者に大きな衝撃を与えました。予想を上回る数の世界初公開の最新兵器が登場し、中には米国の情報機関の報告書にない兵器も含まれていたことから、中国軍の近代化が想像以上の速度で進行していることが明らかになりました。防衛省防衛研究所の杉浦康之主任研究官は、このパレードから読み取れる中国の戦略的意図と、日本が取るべき対応について詳細に分析しています。

防衛省防衛研究所の杉浦康之主任研究官が中国軍事パレードの衝撃を分析防衛省防衛研究所の杉浦康之主任研究官が中国軍事パレードの衝撃を分析

新型兵器の衝撃:ICBM「東風61」と極超音速ミサイルの台頭

今回のパレードで特に注目されたのは、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風61」の初披露です。既に米本土に到達可能な「東風41」を運用している中国軍ですが、「東風61」は今回が初耳であり、その射程や精密さがさらに向上していると推測されます。これに加え、「鷹撃19」をはじめとする複数の新型極超音速巡航ミサイルが公開されたことにも驚きが広がっています。これらのミサイルは、既存のミサイル防衛システムを突破する能力を持つ可能性があり、地域および世界の安全保障環境に大きな影響を与えると考えられます。

無人兵器の進化と「台湾有事」への示唆

新たに登場した無人兵器の数々も、中国軍の戦略的進化を示唆しています。中でも、強襲揚陸艦での運用が想定されるステルス無人爆撃機「攻撃11」は、「台湾有事」を明確に見据えた兵器であると杉浦主任研究官は指摘します。これは、ウクライナ戦争における無人機の活躍から中国が実践的な教訓を学び、それを急速に自国の兵器開発に応用している証拠です。中国は、この分野で自国が他国をリードしていることを誇示する狙いがあると考えられ、将来の戦い方における無人兵器の役割の重要性を浮き彫りにしています。

中国の戦略的意図:世論戦と台湾への圧力

中国の根本的な考えは、武力行使を避けつつ台湾を屈服させることにあり、今回の軍事パレードはそのための「世論戦」の一環と捉えられます。中国軍の圧倒的な「強さ」を知らしめることで、米国をはじめとする国々に台湾有事への介入は「割に合わない」と思わせる狙いがあるのです。さらに、中国は10月10日に台湾の頼清徳総統が行う「双十節」の演説を踏まえ、4月以来となる大規模な軍事演習を台湾周辺で実施する可能性も示唆されています。パレードでの驚きの連続は、今後の台湾情勢における中国の強硬な姿勢を予感させます。

しかし、これらの最新兵器が実戦でどのように運用されるかは未知数であり、今後の動向が注目されます。日本は、今回のパレードを過大評価することも過小評価することもせず、等身大の中国軍を冷静かつ客観的に分析することが不可欠です。そして、何よりも台湾有事の回避に向けて、国際社会と連携しながら外交的努力を継続すべきであると杉浦主任研究官は警鐘を鳴らしています。

参考文献: