中国政府が中朝首脳会談の開催を発表する中、北朝鮮最高指導者である金正恩総書記の随行員が国際会議の場でとったある行動が、世界中の注目を集めています。特にロシアのプーチン大統領との会談後、金総書記が使用した物品を念入りに「拭き取る」姿は、単なる清掃行為を超えた、厳重な情報管理体制の一端を垣間見せるものでした。これは、金総書記の「生体情報」流出を阻止するための徹底した警戒とみられています。
中国での「謎の行動」:金正恩氏の国際舞台
中国・北京で開催された「抗日戦争勝利80周年式典」に出席した金正恩総書記の姿は、多くのメディアで報じられました。その際、カメラは金総書記が座っていた椅子を、何者かが布のようなもので丁寧に拭き取る様子を捉えていました。この「謎の行動」は、金総書記の周囲で常に張り巡らされている厳戒態勢の一端を示唆するものです。
北朝鮮の労働新聞は、この期間中の「金氏流外交」を大々的に報道。紙面の半分近くを割き、20カ国以上の首脳らに囲まれ中心に位置する金総書記の姿や、プーチン大統領と車中で談笑する様子など、37枚もの写真を用いてその蜜月ぶりと、金総書記が世界のリーダーの一員であるかのようなアピールを展開しました。
金正恩氏が座っていた椅子を念入りに拭き取る北朝鮮の随行員
プーチン大統領と車内で談笑する金正恩氏、蜜月ぶりをアピール
プーチン大統領との会談後、世界が注目した「異常な拭き取り」
しかし、プーチン大統領との首脳会談後、さらに具体的な「拭き取り」行為が世界的な注目を集めました。ロシア側のメディアが撮影した映像には、会談終了直後、金総書記が使用していた椅子のひじ掛け部分が、北朝鮮の随行員によって執拗に拭かれている様子がはっきりと記録されていました。この人物はひじ掛けだけでなく、金総書記の体が触れていた背もたれや、サイドテーブルに至るまで、徹底的に拭き清めていました。さらに、金総書記の祖父や父の肖像画が描かれたバッジを胸に付けた随行員は、金総書記とプーチン大統領が口をつけたコップまでもを回収していました。
会談後、金正恩氏のひじ掛けを拭く随行員、バッジが確認できる
生体情報流出阻止が狙い:FNNソウル支局の解説
なぜこれほどまでに徹底した「拭き取り」が行われるのでしょうか。FNNソウル支局の柳谷圭亮記者は、この行動の背景には「金総書記の『生体情報』の流出を防ぐ狙いがある」と分析しています。例えば、指紋は機密文書へのアクセスに使われる可能性があり、また体液からはDNAや健康状態が分析され得るためです。
万が一、金総書記の健康状態に関する「重病説」のような情報が外部に漏洩すれば、北朝鮮の体制そのものに甚大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、随行員たちは、金総書記に関するあらゆる情報につながるものを、神経質なまでに完全に消し去ろうとしていたと考えられます。この一連の行動は、最高指導者の身の安全と情報秘匿に対する、北朝鮮の極めて厳格な姿勢を示しています。
金正恩氏とプーチン大統領が使用したコップを回収する北朝鮮の随行員
金正恩総書記の国際舞台における一挙手一投足は、常に厳重な監視と情報管理下に置かれています。今回の「拭き取り」行動は、北朝鮮が指導者の健康情報やプライベートな情報を守り、体制の安定を最優先する姿勢を明確に示したものと言えるでしょう。