日本維新の会では、秘書やその親族が代表を務める団体への公金支出に関する疑惑が相次いでおり、党は内規でこのような公金支出を禁止する方針を決定しました。共同代表の藤田文武氏も公設秘書の会社に約2000万円の公金を支出していたことが明らかになっていますが、今回の対応は問題のすり替えであり、疑惑を逃れるための一時しのぎに過ぎないという批判の声が上がっています。本誌『週刊ポスト』では、これまでに自民・維新連立のキーマンであり、「高市政権の陰の実力者」とも称される遠藤敬・首相補佐官(維新国対委員長)の公設秘書給与ピンハネ疑惑を報じてきましたが、今回、遠藤氏に新たな疑惑が浮上しました。
秘書給与「ピンハネ疑惑」の経緯
国会議員の公設秘書の給与は国から支給される税金を原資としていますが、遠藤氏の政党支部は、公設秘書3人から5年間で総額796万547円もの寄附を受けていました。この構図は、公金が遠藤氏に「上納」されていたと見られても仕方のないものです。国会議員秘書給与法は、何人も公設秘書に対し、議員の政治団体や政党支部への寄附を勧誘したり要求したりすることを禁じています。
しかし、約221万円を寄附した元秘書A氏は本誌の取材に対し、寄附の経緯について「(寄附を)せなあかんの?ということ。ある人から言われたら、『はいはい』と言わんとしゃあないですよね」と証言しており、寄附の「勧誘」や「要求」があった疑いが指摘されています。遠藤氏にはこの経緯を調査し、説明する責任がありますが、遠藤事務所は「法令にのっとって、適正に対応しております」と述べるのみで、寄附の経緯について詳細な説明を避けています。日本維新の会の党本部も、公金還流を本気でやめるつもりがあるならば、公設秘書から政党支部へのグレーな寄附こそ禁止すべきですが、「寄附自体は制限していないが、自発的でないのなら問題と言える」(維新本部の回答)と、明確な禁止姿勢は見せていません。
新たな疑惑:秘書の実家飲食店への政治資金支出
そんな遠藤氏に、新たな疑惑が持ち上がりました。公設第一秘書B氏の実家が関係する居酒屋に対し、遠藤氏の資金管理団体から3万4000円の政治資金が支出されていたのです。B秘書は遠藤氏の政党支部に約475万円もの高額な寄附を行っており、この店の店長はB氏の父親が店の社長をしていると証言しています。もし遠藤氏がB氏の父親が経営する店に政治資金を落としたのであれば、これは高額な「上納寄附」に対する「ご褒美」だったのではないかという疑念が生じます。
日本維新の会の遠藤敬国対委員長
政策秘書兼職のコンサル会社への支出も
さらに、遠藤氏の資金管理団体「遠藤たかし後援会」の令和5年分の政治資金収支報告書によると、遠藤氏は政策秘書C氏が兼職しているコンサル会社に「会合参加費」として2万円を2回、合計4万円を支出していました。金額は大きくないものの、これも政治資金の還流と見られています。このコンサル会社の代表は、「Cさんは政治活動の経験が長いから、業務上のことでご相談に乗ってもらっている。そういうお付き合いで社員ではない。支払っているのは業務相談の対価です。遠藤後援会からの4万円は私が主宰するセミナーの参加費です」と説明しています。
遠藤事務所に対し、これらの支出について改めて質問したところ、「お尋ねの支出は、いずれも政治活動の一環として支出したものです。(C氏の兼職に)必要な届出は、既に行っているものと承知しています。また、秘書に対し、寄附を指示したことはありません。いずれにせよ、法令にのっとって、適正に対応しております」との回答がありました。
結論
日本維新の会は内規を変更したものの、その対応はあくまで弥縫策であり、有権者が納得できるような具体的な説明をする姿勢は見られません。遠藤敬氏を巡る一連の疑惑は、政治資金の透明性や公設秘書制度のあり方について、改めて深い議論を促すものと言えるでしょう。国民の信頼を得るためには、形式的な法令順守だけでなく、疑惑に対する誠実で詳細な説明が不可欠です。





