ワシントン—ドナルド・トランプ米大統領は9月5日、国防総省の名称を「戦争省」に変更する大統領令に署名する予定である。ホワイトハウス当局者が4日、この異例の措置を明らかにした。この動きは、米国の安全保障政策における潜在的な転換点として、国内外で大きな注目を集めている。
「戦争省」への名称変更:詳細と意図
ホワイトハウスのファクトシートによると、今回の大統領令は、国防総省とその職員に対し、公式文書や公的なコミュニケーションにおいて「戦争長官」「戦争省」「戦争副長官」といった名称の使用を許可するものだ。さらに、この措置は、ヘグセス国防長官に対し、名称変更を恒久化するために必要な立法措置および行政措置を勧告するよう求める。トランプ大統領は1月の就任以来、メキシコ湾を含む複数の場所や施設の名称変更に意欲を示しており、今回の国防総省の改名もその一環とみられている。
2025年9月2日、ワシントンのホワイトハウスで撮影されたドナルド・トランプ米大統領。5日に国防総省の名称を「戦争省」に変更する大統領令に署名する予定。
歴史的背景と議会の承認の課題
省庁の名称変更は非常に稀であり、通常、議会の承認を必要とする。現在、トランプ大統領が率いる共和党は上下両院で僅差ながら多数派を占めており、党の議会指導者らは大統領の構想に反対する姿勢をほとんど示していない。しかし、名称変更には多大な費用が伴うことも指摘されている。国防総省だけでなく、世界中に展開する米軍施設で使用されている標識やレターヘッドなど、広範な更新が必要となるためだ。歴史的に見ると、米国では1947年に国家安全保障法が成立し、陸・海・空軍が単一組織の下に統合された。その後、1949年に可決された修正法によって、この組織は正式に「国防総省」と名付けられ、それまで使用されていた「戦争省」という名称は廃止された経緯がある。
批判と政治的動機への疑問
この名称変更の動きに対し、批判の声も上がっている。退役軍人であり、上院軍事委員会のメンバーでもある民主党のタミー・ダックワース議員は、この費用を軍人の家族支援や紛争防止のための外交官の雇用に充てるべきだと疑問を呈した。ダックワース議員はさらに、トランプ大統領が国家の安全保障強化や勇敢な軍人およびその家族の支援よりも、政治的な得点を稼ぐために軍を利用しようとしていると指摘し、その動機に疑念を投げかけている。
トランプ大統領による国防総省の「戦争省」への名称変更の動きは、その象徴的な意味合いと、それに伴う実務的・財政的な課題、そして政治的思惑を巡る議論を呼び起こしている。この決定が今後の米国の安全保障政策にどのような影響を与えるか、引き続き注視される。
参考文献
- Reuters (2025年9月4日). トランプ米大統領、国防総省の名称を「戦争省」に変更へ. Yahoo!ニュース.
https://news.yahoo.co.jp/articles/71b9d89e331a117c8d5851243656a88faeb8825a