かつてはオプション?現代の日本車で当たり前となった必須装備の進化

今から30〜40年ほど前の車両では、多種多様な装備がメーカーオプションとして提供されていました。しかし現代においては、たとえオプションを一切選択しなかったとしても、十分快適かつ不自由なく運転できるほど、装備類が飛躍的に充実しています。このような進化を遂げた結果、新車価格が高騰しているのも、ある意味で必然と言えるかもしれません。

世代によっては「本当に便利になった」と感じる一方、「標準装備でなければ考えられない」と感じる機能も少なくありません。そこで今回は、昭和から平成初期にかけてはオプション設定だったものの、現在では日本車において標準装備が当たり前となった主要な自動車装備を深掘りし、その進化を解説します。

現代の車に標準装備されている多様な機能と、かつての車のシンプルな内装を対比する様子。快適性と安全性の進化を示す。現代の車に標準装備されている多様な機能と、かつての車のシンプルな内装を対比する様子。快適性と安全性の進化を示す。

現代の必須装備へと変貌したかつてのオプション機能

自動車技術の進歩は目覚ましく、運転の安全性、快適性、利便性を高める多くの機能が標準化されました。ここでは、特にその変化が顕著な装備に焦点を当てます。

SRSエアバッグ:現代の安全基準を築く進化

意外に思われるかもしれませんが、日本においてSRSエアバッグは法律による装着義務化の対象ではありません。しかし、自動車メーカーが搭乗者の安全性を最優先し、率先して装着を推進してきました。近年では、運転席・助手席のステアリングやダッシュボード部分だけでなく、側面衝突に備えるサイドエアバッグ、頭部を保護するカーテンエアバッグも、事実上の標準装備として普及しています。エアバッグ内蔵ステアリングも初期にはデザインが野暮ったいものもありましたが、徐々に洗練され、その結果、好みの社外品ステアリングに交換するという文化は以前ほど見られなくなりました。

エアコン(クーラー):日本の気候に適応した快適装備

2025年の夏も猛暑が予想される中、自動車のエアコンはもはや標準装備というより「必須装備」と化しています。しかし、現在の日本の夏ほど気温が高くなかった時代、旧車やクラシックカーと呼ばれる多くの車両には、強力なエアコンは装備されておらず、単なるクーラーが備わっていれば十分という認識でした。クーラー非装着車の中には、通称「三角窓」が装備されており、真夏でも走行中に車内に涼しい風を取り込み、なんとか暑さに耐えられる工夫がされていました。これは、日本の高温多湿な気候において、快適性を追求する上での大きな進化と言えます。

パワーウインドウ:手動から電動へ、操作性の変革

現在の若い世代にとってはにわかに信じがたいかもしれませんが、自動車の窓ガラスが手動式であり、パワーウインドウがオプションだった時代がありました。手動操作にもかかわらず、パワーウインドウの動作を真似て、それらしくガラスを上下させる姿は、当時のカーライフの一コマでした。今や、手動でウインドウを回す行為は、一周回ってスパルタンなスポーツカーの象徴として「カッコいい装備」と見なされることもあります。旧車オーナーの中には、故障のリスクが少ない手動式の方が良いと、予想以上に好評を博しているケースもあります。

パワーステアリング:運転の負担を軽減する技術革新

かつてのユーノスロードスターの一部グレードや初代NSXのMT車などのスポーツモデルには、パワーステアリング非装着、いわゆる「重ステ」の設定が存在しました。また、軽自動車や乗用車のエントリーグレードでも装備されていないことが多く、現代において「重ステ」を経験したドライバーは少数派になっています。車両重量やタイヤの太さにもよりますが、重ステは意外と気にならず、むしろ路面からのダイレクトなフィードバックに感動を覚える体験を提供します。

オートライト:安全運転を支援する義務化された機能

新型車は2020年4月から、継続生産車も2021年10月から装着が義務化された「オートライト」も、かつては高級車のみに搭載される先進装備でした。昼間にトンネルへ進入すると自動的にヘッドライトが点灯する機能は、ドライバーに深い感動を与えたものです。現在でも、夕暮れ時や夜間に無灯火で走行している車両を見かけることがありますが、オートライトの義務化は、安全性の向上に大きく貢献する歓迎すべき進歩であると認識されています。

まとめ

昭和から平成初期の車両と比較すると、現代の日本車は安全性、快適性、利便性の面で目覚ましい進化を遂げてきました。かつては高価なオプションであったSRSエアバッグ、エアコン、パワーウインドウ、パワーステアリング、そしてオートライトといった機能が、今では標準装備として当たり前になり、私たちのカーライフを豊かにしています。これらの装備の標準化は、自動車技術の発展と消費者のニーズの変化が融合した結果であり、今後もさらなる進化が期待されます。

参考文献