韓国で自身を「世界的な彫刻家」と偽り、中国製の彫像を納品したチェ・パオロ被告に対し、大邱地裁は慶尚北道清道郡への約2億9700万ウォン(約3200万円)の損害賠償支払いを命じる判決を下しました。この事件は、美術界における贋作や経歴詐称の危険性を浮き彫りにし、社会に大きな波紋を広げています。
世界的な彫刻家と自称する人物による詐欺行為を描いたイラスト
経歴詐称と中国製彫像の納品
チェ・パオロ被告は2022年11月、清道郡に対し「全羅南道新安郡の荷衣島に天使像美術館を建設した国際的な彫刻家」と自己紹介しました。さらに、フランスのパリ大学名誉終身教授であり、ロマンカトリック芸術院の正会員として、世界20カ国以上の美術館や聖堂に約200点の作品を設置したと偽りの経歴を提示。清道郡はこの言葉を信じ、新花郎風流村とセマウル運動発祥地記念公園に設置する彫像20点を2億9700万ウォンで購入しました。しかし、これらの作品は全て中国の工場から輸入された中国製であることが後に判明しました。
清道郡に設置されたチェ・パオロ被告による中国製と判明した彫像
偽りの経歴と過去の詐欺行為
チェ被告の経歴詐称は徹底的でした。実際には小・中・高校を卒業しておらず、10代からソウル市内の鉄工所や木工所で働いていたことが判明。20代から40代にかけては詐欺罪などで複数回服役し、収監中に高卒認定試験を受けていた過去がありました。自身がフランス・パリ第7大学名誉教授として在職していたと偽っていた時期には、青松刑務所(現・慶尚北道北部刑務所)で服役中だったという事実も明るみに出ました。さらに、この詐欺は今回が初めてではなく、2019年には新安郡に接近し、荷衣島に318点の天使像を設置する名目で19億ウォンを騙し取っていました。これらの天使像もフィリピンや中国の工場から輸入された偽造品でした。
裁判の現状と今後の行方
大邱地裁は今年2月、チェ被告に対し詐欺などの罪で懲役2年6カ月、執行猶予4年の判決を言い渡しました。現在、この刑事裁判は大邱高裁で控訴審(二審)が進められています。今回の損害賠償命令は、民事における責任を明確にしたものであり、公的機関が詐欺の被害に遭ったことの重大性を示しています。この事件は、国際的な美術品取引における透明性や、個人経歴の確認の重要性を再認識させる契機となるでしょう。
参考文献
- 朝鮮日報日本語版
- Yahoo!ニュース