今週末、世界各地の天文愛好家たちは、空に繰り広げられる特別な天体ショーに注目するでしょう。皆既月食によって月が赤く染まる「ブラッドムーン」が出現する可能性があり、同時に北米では「コーンムーン」の満月が観測されます。この珍しい天文イベントについて詳しく見ていきましょう。
皆既月食と「ブラッドムーン」のメカニズム
皆既月食は、太陽、地球、月が一直線に並び、月が地球の影に完全に覆われることで発生します。このとき、月が赤く見える現象は「ブラッドムーン」として知られています。その理由は、太陽光の一部が地球の大気層を回り込む際に、波長の短い青い光は大気中の分子によって散乱され、波長の長い赤い光だけが月に到達して反射されるためです。地球大気がフィルターのような役割を果たすことで、月は深く赤みがかった色を帯びて輝きます。
観測日時と対象地域:ゆっくりと進む天体ショー
米航空宇宙局(NASA)によると、今回の皆既月食は、欧州、アフリカ、アジア、オーストラリアの広範囲で9月7日に観測される見込みです。具体的な観測時間は、米東部時間7日午前11時28分(日本時間8日午前0時28分)に始まり、午後4時55分に終了します。皆既月食が始まるのは米東部時間7日午後1時30分(日本時間8日午前2時30分)で、約1時間23分間にわたって続く予定です。
NASAゴダード宇宙飛行センターのノア・ペトロ氏は、月食の最大の魅力はその「緩やかさ」にあると指摘しています。「日食が比較的急速に進行するのに対し、月食は非常にゆっくりとした現象です」と彼は説明し、特別な場所に出向く必要はなく、適切な半球にいれば観測可能であると述べています。
北米・南米では「コーンムーン」の満月
残念ながら北米と南米に住む人々は皆既月食を観測することはできませんが、今週末に満月を楽しむ機会があります。今回の満月は、9月の満月を指す別称である「コーンムーン」(トウモロコシ月)として知られています。
米農事暦によると、9月はトウモロコシの収穫期と重なるため、この名が付けられました。今回の満月は皆既月食とほぼ同時刻にピークを迎えますが、肉眼ではピークの前日や翌日もほぼ円形に見えるため、週末から週明けの8日頃まで美しい満月が観測できるでしょう。
ウィスコンシン州で大豆畑の上空に輝く「コーンムーン」(2024年9月撮影)
結論
今週末、世界各地で「ブラッドムーン」を伴う皆既月食、または「コーンムーン」の満月という、それぞれ異なる形で夜空の魅力を体験できる機会が訪れます。天文ファンにとって見逃せないこの機会に、ぜひ空を見上げて自然が織りなす壮大なショーを楽しんでみてはいかがでしょうか。