石破首相退陣で激化する自民党総裁選:小泉進次郎氏と高市早苗氏が本命か

石破茂首相(自民党総裁)が9月7日に退陣を表明したことを受け、自民党内では次期総裁を巡る動きが早くも活発化している。日本の政界は、ポスト石破を誰が担うのか、その行方に注目が集まっている。国民の関心も高く、次期首相候補の動向が連日報じられている状況だ。

茂木氏と林氏、早期に立候補表明

首相の退陣表明からわずか翌日である8日には、茂木敏充前幹事長が一番早く立候補の意向を表明した。茂木氏は「私のすべてをこの国に捧げたい」と語り、並々ならぬ意欲を見せている。同日夕方には、林芳正官房長官も出馬する意向を固めたと報じられ、総裁選は早くも混戦模様を呈し始めている。これらの動きは、党内の権力空白を埋めようとする各派閥の思惑が絡み合っていることを示している。

本命視される小泉進次郎氏と高市早苗氏

全国紙政治部記者の見方によれば、茂木氏が先陣を切ったものの、本命は小泉進次郎農水相と高市早苗前経済安全保障相とみられている。小泉氏はその圧倒的な知名度で国民の注目を集め、高市氏は前回の総裁選で決選投票まで進んだ実績がある。この両者が、今回の自民党総裁選の主要な軸となると予測されている。

小泉氏の強み:抜群の知名度と実行力

小泉氏の最大の強みは、その群を抜いた知名度と発信力にある。特に「令和の米騒動」と呼ばれた米価高騰の際には、農水相として備蓄米の放出という大胆な対策を打ち出したことで、「進次郎米」という言葉まで生まれた。JA(農業協同組合)からの反発など批判も上がったが、そのスピード感や実行力については一定の評価を得ている。国民への分かりやすいメッセージ発信も得意としており、その影響力は無視できない。
石破首相退陣後の自民党総裁選、次期首相候補への関心を示す石破首相退陣後の自民党総裁選、次期首相候補への関心を示す

高市氏の強み:保守層からの厚い支持

一方、高市氏は党内でも特に保守色の強い政治家として知られている。毎年欠かさず行う靖国神社への参拝は、彼女の政治信条を示すライフワークとも評される。このため、党内の保守層からの支持は非常に厚く、石破政権下で流動化した保守層の支持を自民党に取り戻す存在として期待する声も大きい。その政策へのこだわりと信念は、多くの支持者にとって魅力的に映る。

両氏が抱える課題と党内の懸念

しかし、両者にはそれぞれ課題も山積している。次期総裁として、これらの課題をどう乗り越えるかが問われるだろう。

小泉氏の課題:「進次郎構文」と“中身の薄さ”

自民党関係者は小泉氏について、「環境相時代に『気候変動問題をセクシーに』と発言した時のように、国民からも党内関係者からも、『進次郎構文』と発言が揶揄されることが多い」と指摘する。国会改革を盛んに唱えていた時期には、当時の国対幹部から「一度でも国対をやってから物を言え」と不快感を示されたこともあった。その後、国対副委員長を務めたことで評価もされたが、パフォーマンスに走り「中身の薄さ」が目立つ傾向は否めないという。しかしながら、小泉氏は菅義偉副総裁との関係も良好であり、総裁選出馬に必要な20人の推薦人集めには苦労しないとみられている。

高市氏の課題:党内基盤の弱さと“右傾化”への不安

高市氏には、総裁選前から党内での暗雲が漂っている。石破首相が「党内基盤が弱い」「人望がない」と言われたように、高市氏も党内からの人望という面では課題を抱えている。前々回の総裁選では、政策へのこだわりが強く、一人で夜中まで政策に手を入れていたという。ベテラン議員が「細かいところは他の人に任せて、候補者本人は若手を飲みに連れていくなり、仲間づくりを優先した方がいい」とアドバイスしても、あまり耳を貸さなかったという逸話もある。

別の自民党関係者は、高市氏が総裁になった場合、「参政党の躍進にも繋がった保守層が自民支持に帰ってくることも期待できる」としながらも、「ただ、右過ぎて、何をするかわからないという恐怖も党内では根強いんです。参政党と連立なんてことも言いかねないですから」と懸念を表明している。

結論

現在、自民・公明両党は衆参両院で過半数割れの少数与党となっており、次期総裁には非常に難しい国会の舵取りが求められる。国民の生活と国際情勢が複雑に絡み合う中で、リーダーシップを発揮できる人材が不可欠だ。“進次郎構文”と揶揄される発言の「小泉総裁」か、“右過ぎる”と党内から警戒される「高市総裁」か──日本の未来は、この自民党総裁選の結果に大きく左右されることとなるだろう。

参考文献