参院選での歴史的大敗からわずか49日、宰相の座にあった石破茂首相(68)が電撃的な退陣を表明しました。これにより、自民党内では新たなリーダーを選出する総裁選挙が「フルスペック型」で実施されることが決定。混迷する政局の行方に、日本中が注目しています。
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「後進に道を譲る決断」永田町を駆け巡った緊迫の一日
9月7日の朝、東京・永田町の首相官邸は普段とは異なるただならぬ空気に包まれていました。午前中から首相秘書官らが慌ただしく駆け回り、午後には岩屋毅外務相(68)や赤澤亮正経済再生担当相(64)といった閣僚が次々と官邸に入り、緊迫感は最高潮に達しました。午後3時過ぎには、NHKと朝日新聞が相次いで「退陣の意向」を速報。この報道から3時間後、官邸で急遽記者会見が開催されたのです。
会見の冒頭、紅潮した面持ちの石破首相は「自民党総裁の職を辞することとした。臨時総裁選挙の手続きを実施するよう森山幹事長に伝えた」と述べ、正式に辞意を表明しました。続けて、退陣の理由として「かねてより“地位に恋々とするものではない。やるべき事をなしたのちにしかるべきタイミングで決断する”と申し上げてきた。アメリカの関税措置に関する交渉に一つの区切りがついた今こそがしかるべきタイミングであると考え、後進に道を譲る決断をした」と説明。米国との貿易交渉に一定の区切りがついたことを、今回の決断の決め手としました。
次期自民党総裁選の構図:有力候補と「フルスペック」の戦略
石破首相の辞意表明を受け、次期自民党総裁を決める選挙は、党員・党友による投票が加わる「フルスペック方式」で実施されることになりました。選挙日程は9月22日告示、10月4日投開票の予定です。
このフルスペック方式の1回目の投票では、全国約100万人の党員票が、党所属の国会議員票と同数の295票に換算されます。これに議員票を加えた計590票の過半数を獲得した者が新総裁となりますが、1回目で過半数を得る候補がいなければ、上位2名による決選投票で最終的な勝敗が決まります。
現在、総裁選の候補者として名前が挙がっているのは、小泉進次郎農水相(44)、高市早苗前経済安保相(64)、小林鷹之元経済安保相(50)、林芳正官房長官(64)、茂木敏充前幹事長(69)の五名です。特に茂木氏は、石破首相の辞意表明から間もない8日には、いち早く総裁選への出馬意向を表明し、早くも動きを見せています。
政治部デスクの解説によると、今回の総裁選の主要な軸となるのは、世論調査の「次の首相にふさわしい人物」でそれぞれ約2割の支持を集める小泉氏と高市氏です。前回の総裁選では、小泉氏が党員票で伸び悩んだ結果、合計136票で3位に留まりました。一方、高市氏は事前の予想を大きく上回る109票の党員票を獲得し、議員票と合わせて合計181票で1回目の投票をトップで通過。この実績から、巷では「フルスペック方式ならば高市氏有利」との声が上がっています。
新たなリーダーシップへの期待と課題
石破茂首相の突然の退陣表明は、日本の政局に大きな波紋を広げました。参院選での大敗という結果を受け、その責任を取る形での辞任は、自民党に対する国民の厳しい目を改めて浮き彫りにしています。次に控える自民党総裁選は、単なる党のリーダー選びにとどまらず、混迷する国内外の課題にどう向き合うか、日本がどのような未来を描くかを示す重要な選択となります。新総裁には、国民の信頼を取り戻し、党を立て直す強いリーダーシップが求められることでしょう。