日本全国でクマ被害が過去最多に…専門家が警告する首都圏「要注意エリア」とは

日本全国でクマによる被害が深刻化しており、環境省が10月15日に発表した2025年度の速報値によると、犠牲者(死亡者)は7人に達し、過去最多を更新しました。この数字は、クマの活動が活発になる秋が深まるにつれて、さらに増加する可能性を秘めています。特に、市街地でのクマの目撃情報が増え、人との遭遇リスクが高まっている現状は、これまでになく警戒が必要です。専門家は、強力なクマが市街地に降りてくる可能性を指摘しており、本記事では、その背景と首都圏で今後「クマ出没」が懸念されるエリアについて、最新の専門的見解を基に解説します。

住宅街に出没したクマのイメージ写真。奥に家々が見える森の中にツキノワグマがいる。住宅街に出没したクマのイメージ写真。奥に家々が見える森の中にツキノワグマがいる。

クマの犠牲者7人、過去最多を更新:都市部での目撃情報も増加

今年度のクマによる犠牲者は合計7人となり、過去最多を記録しました。地域別に見ると、北海道と岩手県でそれぞれ2人、宮城県、秋田県、長野県でそれぞれ1人が犠牲となっています。さらに、4月から9月末までの期間で、重軽傷者を含むクマの被害者は全国で計108人に上っており、その深刻さを物語っています。

近年、人口の多い都市部の住宅街でクマが目撃されるニュースはもはや珍しくありません。速報値が公表された直後の10月16日には、札幌市中央区の住宅の庭にクマが出没しました。これを受けて近隣の小中学校が臨時休校となるなど、一般市民の生活が直接的に脅かされています。また、10月7日には群馬県沼田市にある営業中のスーパーマーケットにクマが侵入し、買い物中の男性2人が襲われ、背中や手足にけがを負う事件も発生しました。本来、クマは臆病な性格で、人に対する警戒心が強いとされていますが、なぜこれほどまでに人里へ降り、人間を襲うケースが増えているのでしょうか。

「9回襲撃から生還」の専門家が語るクマの行動パターンと首都圏のリスク

この問いに対し、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦氏は、長年の研究と実体験に基づいた見解を述べています。米田氏は秋田県立鳥獣保護センターでの勤務を経て、1986年以降ツキノワグマの研究に専念。1989年に日本ツキノワグマ研究所を立ち上げたクマの専門家です。特筆すべきは、調査中にクマに9回も襲われながらも生還したという稀有な経験を持ち、有効なクマ対策を身をもって知るスペシャリストである点です。

米田氏によると、クマが市街地に出てくる「順序」があり、9月、10月、11月と、秋が深まるごとにクマが人間の住むエリアに降りてくる目的も異なるといいます。今年はすでに東京都内の八王子市、あきる野市、青梅市、日の出町、奥多摩町、檜原村から210件を超えるクマの目撃情報が寄せられており、神奈川県や埼玉県でも出没が増加傾向にあります。秋が深まり、冬眠を控えて栄養を蓄えるために活動が活発化するクマの特性を踏まえ、米田氏は首都圏で特に警戒すべき「要注意エリア」について緊急提言を行っています。

迫り来る冬、クマとの共存に向けた理解と警戒

クマによる人身被害が過去最多を更新する中、都市部での出没も頻繁になり、私たちはクマとの新たな共存の局面を迎えています。専門家である米田一彦氏の知見は、この問題への理解を深め、適切な対策を講じる上で不可欠です。秋が深まり、冬眠前のクマの行動が活発化する時期だからこそ、その行動パターンを把握し、自身の生活圏でのリスクを正確に認識することが重要です。今後、米田氏が具体的に指摘する首都圏の「要注意エリア」に関する情報に注目し、地域の皆様一人ひとりが警戒心を高め、安全確保に努める必要があります。