公立学校で急増する日本語指導必要児童生徒、専門人材不足の深刻な現状

教員であれば誰しも、日々の苦労を分かち合ったり、喜びを共有したいと願うものです。それは学校現場で働く教員も例外ではありません。この記事では、公立の小・中学校で日本語指導支援者として働く佐藤俊子さん(仮名)の経験を通じて、学校現場の知られざる「リアル」をお届けします。近年、日本語を話せない外国籍の子どもが急増しているにもかかわらず、日本語指導の専門性を持つ人材が不足しているという深刻な現状が、学級運営や授業にどのような影響を及ぼしているのか、現場の切実な声に耳を傾けます。

日本語指導が必要な外国籍児童生徒数の急増

現在、公立の小中高校において日本語指導が必要な児童生徒の数は6万9123人に上ります。これは約10年前と比較して、およそ1.9倍の増加です。この中には海外から帰国した日本国籍の児童生徒も含まれていますが、その約8割は外国籍の児童生徒が占めています。文部科学省は、こうした児童生徒が学校生活や学習に必要な日本語を習得できるよう、特別な制度を設けています。

原則として、児童生徒が在籍する学校での「取り出し」指導が義務教育段階における日本語指導のための特別の教育課程として実施され、日本語指導担当教員(教員免許保持者)または日本語指導担当教員と指導補助者が年間10~280単位時間指導を行うこととされています。

学校の廊下を歩く子供たちの後ろ姿学校の廊下を歩く子供たちの後ろ姿

専門人材の不足と現場の課題

しかし、佐藤さんによると、常駐の日本語指導担当教員がいる学校は自治体内で数校に過ぎず、教員免許を持たない佐藤さんのような外部の日本語指導支援者が携わるケースがほとんどだといいます。文部科学省は、2017年度から2026年度までの10年間で段階的に「日本語指導担当教員を18人に1人」の割合で配置する目標を掲げていますが、現状では配置が追いついていない地域も多く見られます。そのため、拠点校に集まって指導を行ったり、外部指導者に頼ったりすることが多いのが実情です。

日本語指導が必要な児童生徒数の推移を示すグラフ日本語指導が必要な児童生徒数の推移を示すグラフ

佐藤さんのような外部の日本語指導者は、自治体によって日本語指導員、日本語等指導講師、日本語学習支援員など、さまざまな呼称がありますが、彼らが現場で果たす役割は極めて重要です。専門人材の不足は、日本語指導が必要な児童生徒の学習機会を十分に確保できないだけでなく、学級全体の運営にも影響を及ぼしかねない、喫緊の課題となっています。

公立学校における日本語指導が必要な児童生徒の急増と、それに伴う専門人材の不足は、日本の教育現場が直面する大きな課題です。この状況が続く限り、外国籍の子どもたちが日本の学校で十分な教育を受け、社会に適応していく上で障壁となり、学級運営や教員の負担増大にもつながる可能性があります。早急な対策と、専門性を持つ人材の確保が求められています。


参考文献: