OECD(経済協力開発機構)はじめ数々の機関の調査で、日本人の平均睡眠時間は世界各国のなかで最も短く、世界一睡眠不足であることが指摘されています。とはいえ「睡眠時間が短いのは仕方ない」と考える人が多いのでは?
しかし「睡眠不足はみなさんが思っているより危険なこと」と指摘するのは睡眠専門医の渥美正彦さんです。渥美さんは睡眠時間を最優先で確保することで有名な大谷翔平選手を例に出し「眠ることは最高のビジネススキル」だと説きます。
そこで本記事では、渥美さんの著書『ぐっすり! 1万人を治療した専門医が教える最強の睡眠メソッド』より一部を抜粋し、睡眠不足が続くと健康にどのような影響があるかを考えます。
■睡眠不足が続くと認知症のリスクが高まる
認知症は、多くの人が「できる限り避けたい」と考える病気のひとつではないでしょうか。近年の研究で、睡眠不足が続くと認知症の発症リスクが高まることが明らかになっています。
睡眠は脳の健康に不可欠であり、十分な睡眠を確保することが、認知症の予防にもつながります。睡眠不足が続くと、脳内でアミロイドβタンパクが蓄積しやすくなり、これがアルツハイマー型認知症の発症リスクを高める可能性があることが、近年の研究で示されています。
アメリカの研究グループによるPETを用いた研究では、一晩徹夜しただけで、脳内のアミロイドβタンパクが約5%増加したことが報告されています。これは、徹夜することによって、睡眠中に脳内からアミロイドβタンパクを洗い流すメカニズムが動作しなくなるためではないかと考えられています。
また、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジとフランス国立健康医学研究所が共同で行った25年間の追跡研究では、50〜70代を対象に睡眠時間と認知症発症リスクを分析しました。
その結果、睡眠時間が6時間未満の人は、7時間以上眠る人に比べて認知症発症リスクが約30%高く、性別や生活習慣、健康状態などを調整しても、この傾向は変わらないことがわかりました。
さらに、2025年にインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究グループが、遺伝子を手がかりに睡眠と脳機能の関係を調べたところ、7時間未満の短時間睡眠そのものが、認知機能低下を引き起こす原因の一つである可能性が高いことが判明しました。






