定時制課程と通信制課程を併設する都立新宿山吹高等学校(以下、新宿山吹高校)は、都立高校初の「単位制」かつ都立高唯一の「無学年制」を採用していることで知られています。不登校経験者をはじめ、多様な背景を持つ生徒を受け入れ、近年では都内の進学校からの転学・編入学も増加しており、その人気とユニークな教育システムに注目が集まっています。本記事では、新宿山吹高校がなぜこれほどまでに生徒を惹きつけ、高い学習意欲を引き出しているのか、その秘密に迫ります。
都立高初の「単位制」、唯一の「無学年制」が新宿山吹高校の魅力
東京メトロの神楽坂駅や江戸川橋駅から徒歩約10分の場所に位置する新宿山吹高校は、大きなケヤキが並ぶ早大通りに面し、まるでオフィスビルのようなモダンな校舎が特徴です。その外観だけでなく、教育システムも一般的な公立高校とは一線を画しています。「単位制・無学年制」という大きな特徴により、生徒は自分で履修する授業を選択し、自分だけの時間割を作成して学習を進めます。
このシステムでは、学年による区別がなく、1年生相当の生徒と3年生相当の生徒が同じ教室で授業を受けることも珍しくありません。また、進級や留年といった概念もなく、教室には学年やクラスを示す表示はありません。「現代の国語」「物理基礎」「情報セキュリティ」といった授業名が掲げられた教室を生徒たちは移動し、各自が選択した授業に真剣に取り組む姿が見られます。副校長の石井健一氏は、「本校には目的意識が明確で、学ぶ意欲の高い生徒が多いです。最長で6年間在籍できますが、多くの生徒が3〜4年で卒業していきます」と語り、生徒たちの主体的な学びへの姿勢を強調しています。
オフィスビルのような都立新宿山吹高校の校舎外観
1980年代の教育課題から生まれた革新的な学びの場
新宿山吹高校が開校したのは1991年のことです。開校当初から教員として着任していた統括校長の永浜裕之氏によると、その背景には1980年代の深刻な教育課題がありました。当時、全国の高校中退者は公・私立合わせて毎年約10万人を超え、彼らが再び学ぶための「受け皿」が求められていたのです。
この課題に対応するため、過去に取得した単位も総単位数に加算できる「単位制高校」が全国的に設置されるようになりました。新宿山吹高校もその流れの中で、昼夜間の定時制課程と通信制課程を併設する形で誕生しました。都立高校としては初の単位制高校であり、全国でも4番目、1000人規模の学校としては先駆け的な存在でした。さらに、永浜氏が指摘するように、現在に至るまで「無学年制」を採用する都立高校は新宿山吹高校が唯一であり、その革新性が今もなお際立っています。
まとめ
都立新宿山吹高校は、「単位制」と「無学年制」という独自の教育システムを通じて、多様な学習ニーズを持つ生徒たちに柔軟で主体的な学びの場を提供しています。不登校経験者から進学校からの転入者まで、様々な背景を持つ生徒たちが自身のペースで学び、高い目的意識を持って卒業していく姿は、その教育的価値と成功を証明しています。未来の教育のあり方を示唆する、新宿山吹高校の挑戦はこれからも続きます。





