「50年ローン」といった超長期ローンでの住宅購入が増加する中、「購入か賃貸か」という長年の議論は、令和の時代において新たな局面を迎えています。住宅金融支援機構(JHF)の2025年4月調査によると、「借入期間35年超〜50年以内」を選択した割合が約25.5%に達するなど、その選択肢は多様化。しかし、住宅コンサルタントの寺岡孝氏が指摘するように、最終的な判断を下す前に、冷静に数字で比較検討することが不可欠です。本記事では、激変する東京の住宅事情と、その背景にある不動産業界の構造変化を深掘りし、令和版「買うvs.借りる」の新たな終着点を探ります。
激変する東京の住宅事情:サラリーマンには高嶺の花か
東京23区における新築マンションの平均価格(70平方メートル換算)は、過去10年間で劇的な変化を遂げました。2013年頃には約5000万円台だった価格が、2024年には約1億2000万円へと倍増し、場所によっては1億5000万円を超える物件も珍しくありません。しかし、この10年間でサラリーマンの給与が倍になったわけではありません。物価は上昇する一方で給与はほぼ横ばい。この結果、東京23区のマンションはもはや一般的な会社員が無理なく購入できる「住居」ではなく、富裕層向けの「高級資産」へとその性質を変貌させてしまったのです。
住宅購入と賃貸の選択肢を示す家のイラストこのような状況下で、都心でマンションを購入すべきか、それとも賃貸で住み続けるべきかという問いに対する答えは、従来の常識とは大きく異なりつつあります。30年間の総コスト比較、元利均等返済の仕組み、建物寿命と資産価値、そしてローン残債といった、不動産業界の裏側に潜む重要な要素を冷静に分析することが、賢明な選択へと繋がるでしょう。
都心マンションが「投資商品」と化した背景
この10年間で都心マンション価格が倍増した背景には、複数の複雑な要因が絡み合っています。第一に、歴史的な円安が挙げられます。ドル建てで見ると東京のマンション価格は相対的に割安に見えるため、国内外の投資家が大量に流入し、投資目的での購入が急増しました。さらに、日本銀行の超低金利政策が継続されたことで、借入コストが低く抑えられ、これも投資家にとって魅力的な条件となりました。
加えて、都市部への人口集中、建築費の高騰、用地不足による新築供給の減少といった構造的な問題も価格上昇に拍車をかけています。これらの要因が複合的に作用した結果、都心マンション市場は、実際に住む人の「実需」ではなく、「投資リターン」で価格が決まる市場へと変化していったのです。つまり、現在の都心マンションは「住むための家」というよりも、「投資家のための金融商品」としての側面が強くなっていると言えます。これが、一般の庶民にとって手が届かない価格帯になってしまった根本的な理由です。
まとめ:冷静な比較が賢明な選択を導く
東京の住宅市場は、過去10年で大きく変貌し、特に都心部のマンションは投資商品としての性格を強めています。このような状況下では、「購入か賃貸か」という問いに対する安易な答えは存在しません。寺岡孝氏が提言するように、50年ローンなどの超長期ローンを選択する前に、30年間の総コスト、建物の寿命、将来の資産価値、そしてローン残債といった具体的な数字を冷静に比較検討することが極めて重要です。現代の経済状況と市場の特性を深く理解し、自身のライフプランに合った最適な選択を見極めることが、より豊かな住まいと生活を実現するための鍵となるでしょう。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: 「購入か賃貸か」令和の終着点…東京23区の新築マンションが10年で「倍増」した“納得の理由” (2025年12月12日)





