日本において、乳がんは年間約10万人が罹患し、女性がかかるがんの中で最も多い病気として「9人に1人」という高い確率で身近な存在となっています。特に30代から増加し、40代後半から60代後半が発症のピークとされています。40歳以上の女性には2年に1回の乳がん検診が推奨されていますが、実際の受診率は47.4%と半数にも満たない状況です。乳がん検診の主流であるマンモグラフィ検査は、乳房を圧迫してX線撮影を行うため、「痛そう」「不安」という声が多く、これが受診をためらう大きな要因の一つとなっています。
このような背景の中で、痛みや身体への負担がない新しい乳がん検診として、「無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)」が注目を集めています。
無痛MRI乳がん検診「ドゥイブス・サーチ」とは
「無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)」は、造影剤の注射が不要なMRIを用いた検査方法です。従来のマンモグラフィのような痛みを伴わず、身体への負担が少ない点が最大の特徴です。この画期的な検診方法は、国会でも取り上げられるほどその重要性が認識されています。2025年5月には小野田紀美経済安全保障担当相が自己負担でこの検診を受けていると発言し、翌月には塩村あやか参議院議員が「時代に求められている検診方法」として言及しました。
地方自治体もこの検診方法に注目しており、そのニーズの高さが明らかになっています。今年6月には滋賀県彦根市が無痛MRI乳がん検診費用の全額助成を500名限定で受け付けたところ、予約が殺到し、わずか累計7時間で定員に達しました。この事例は、痛みのない乳がん検診への社会的需要がいかに高いかを明確に示しています。
従来の検診との違いと筆者の体験
本当に痛みがないのか、従来の乳がん検診と何が違うのか、そしてメリット・デメリットは何か。40代女性でマンモグラフィと超音波検査の経験がある筆者が、実際に体験取材を行いました。
乳房を「見せない」「触られない」検査であるため、心理的な負担が非常に少ない点が印象的でした。多くの女性が抱えるデリケートな部位の検査に対する抵抗感を軽減できるのは、受診率向上にも繋がる重要な要素です。
高原クリニックでの検査プロセス
筆者が訪れたのは、無痛MRI乳がん検診を開発した高原太郎医師が院長を務める「高原クリニック イノベーティブスキャン」(東京都世田谷区)です。
無痛MRI乳がん検診を受ける筆者の様子
まず問診票を記入し、検査の流れについて事前の説明を受けます。その後、無痛MRI乳がん検診専用に作られたオリジナル検査着に着替えます。この検査着には、放射線技師が利用者の胸に触れることなくMRI撮影が行えるよう、乳房の位置を示すマークが印されているなど、合理的な工夫が随所に凝らされていました。
下着を外す検査であるため、利用者としては検査着の素材や色が気になるものですが、この検査着は厚手の生地で色も濃く、乳房が透ける心配がなく、安心して検査に臨むことができました。
まとめ
無痛MRI乳がん検診「ドゥイブス・サーチ」は、従来のマンモグラフィ検査の痛みへの懸念を解消し、より多くの女性が乳がん検診を受けやすい環境を創出する可能性を秘めています。国会での言及や地方自治体での助成事例からも、その重要性と社会的なニーズの高さが伺えます。痛みがなく、心理的負担の少ないこの検診方法が広く普及することで、乳がんの早期発見が促進され、女性の健康寿命の延伸に貢献することが期待されます。





