かつて腎臓病に関する常識とされていた事柄は、今では大きく見直されています。例えば、「腎臓が弱い人は安静にするべき」「厳格な食事制限が必要」「一度悪くなった腎臓は回復しない」といった考え方は、現在では誤りであることが判明しています。現代の腎臓病治療では、適度な運動が推奨され、食事も工夫次第で健常者と変わらない内容を楽しむことが可能です。さらに、「腎臓リハビリ」という革新的なメソッドによって、腎機能の進行を効果的に抑制し、病状を回復させることが期待できるようになりました。
東北大学名誉教授である上月正博氏は、この「腎臓リハビリ」の提唱者であり、従来の腎臓治療における誤った常識を覆してきました。上月教授は、新著『腎臓大復活』の中で、腎機能を強化し、人生を取り戻すための具体的なノウハウを惜しみなく紹介しています。本稿では、上月教授が解説する「腎臓寿命を延ばすための食事のひと工夫――たんぱく質対策編」に焦点を当て、その重要なポイントを解説します。
腎機能低下における「たんぱく質の摂り方」の難しさ
腎機能低下が懸念される方にとって、食事療法で最も難しいとされるのが「たんぱく質の摂り方」です。なぜなら、たんぱく質は多すぎても少なすぎても問題が生じるからです。現在、慢性腎臓病を患っている多くの方が、肉、魚、卵などのたんぱく質をどのように摂取すれば良いのか、頭を悩ませていることでしょう。しかし、ご心配は無用です。「腎臓リハビリ」の食事療法では、患者さんがストレスを感じることなくたんぱく質と向き合えるような工夫が考案され、治療に活用されています。ここでは、その具体的なノウハウをご紹介します。
たんぱく質の摂り方の工夫を紹介するイメージ
腎機能とたんぱく質の基本的な関係
まず、腎機能とたんぱく質の基本的な関係について理解しておきましょう。肉、魚、卵などのたんぱく質は、体内で代謝される過程で多くの老廃物を生成します。これらの老廃物が腎臓に負担をかけるため、一般的に「腎臓が悪い人はたんぱく質の摂取を控えるべき」と言われています。実際、現在の慢性腎臓病の食事指導ガイドラインでも、病状の進行ステージに応じて「摂取して良いとされるたんぱく質の量」が厳密に定められています。
しかし、だからといって「減らせば減らすほど良い」というわけではありません。むしろ、「減らしすぎ」は絶対に避けるべきであると認識しておく必要があります。たんぱく質の過度な制限は、筋肉量の減少や低栄養状態を引き起こし、全身の健康状態を悪化させるリスクがあるため、適切な量の摂取が極めて重要となります。
「腎臓リハビリ」が提唱する賢いたんぱく質摂取の秘訣
「腎臓リハビリ」では、単にたんぱく質を制限するのではなく、その質や摂取タイミング、調理法に工夫を凝らすことで、腎臓への負担を軽減しつつ必要な栄養を確保するアプローチを重視します。例えば、植物性たんぱく質を積極的に取り入れたり、消化吸収の良い形に調理したりすることなどが挙げられます。また、食事全体のバランスを見直し、カリウムやリンなどの摂取量も考慮に入れることで、より総合的な腎臓ケアを目指します。
食事療法におけるストレス軽減と継続性
腎臓病の食事療法は長期にわたることが多く、厳しい制限は患者にとって大きなストレスとなりかねません。「腎臓リハビリ」のアプローチは、患者さんが無理なく、そして楽しく食事を続けられるように、個々の状況に合わせた柔軟な指導を特徴としています。日々の食生活の中で、少しの工夫と意識改革を行うことで、たんぱく質との健全な付き合い方を実現し、腎臓の健康を維持していくことが可能になります。
まとめ
腎臓病治療の常識は時代とともに進化し、現在の「腎臓リハビリ」は、従来の「安静・厳格な制限」という考え方を刷新しました。上月正博教授が提唱するこのメソッドは、適度な運動と賢いたんぱく質摂取を通じて、腎機能を強化し、病状の回復・進行抑制を目指します。特にたんぱく質の摂取においては、単なる制限ではなく、適切な量と質の選択、そして工夫された摂取方法が重要です。過度な制限は避け、医師や管理栄養士の指導のもと、自身の腎機能ステージに合わせた最適な食事療法を実践することで、ストレスなく健康な腎臓寿命を延ばすことができるでしょう。
参考文献:
- 上月正博 (2025). 『腎臓大復活』.
- Yahoo!ニュース, 「たんぱく質の摂り方」がいちばん難しい 腎臓病治療の“誤った常識”が大きく変わったワケ, https://news.yahoo.co.jp/articles/a163a2fe5f79ee1a02b1105258be6a417eb5eba0





