指定暴力団住吉会系の組員らによる特殊詐欺事件をめぐり、被害に遭った茨城県の女性3人が、住吉会の関功会長と福田晴瞭(はれあき)前会長に計約700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決公判が19日、東京高裁であった。岩井伸晃裁判長は、暴力団対策法上の使用者責任を負うと判断し605万円の支払いを命じた1審水戸地裁判決を支持した。特殊詐欺で暴力団のトップに暴対法上の使用者責任を適用した高裁判断は初めて。
今年5~11月に水戸地裁と東京地裁であった4件の判決では、暴力団の威力を利用していたか否かの評価をめぐり司法判断が分かれている。4件のうち2件は使用者責任を認めなかったが、残り2件は責任を認めて暴力団トップに賠償を命じていた。
判決などによると、被害者の女性3人は平成28年7~8月、自宅で電話を受けた際に親族を装った人物から「金が必要だ」などと持ちかけられた。1審水戸地裁は、このうち2人について、計500万円をだまし取られたものの、1人は嘘に気付いて現金を渡していなかったことから、請求を棄却していた。
暴対法は指定暴力団の組員が暴力団の威力を利用して資金を獲得した際は代表者が賠償責任を負うと規定。組員らは被害者をだました際には暴力団員を誇示していなかったが、高裁判決は「受け子」などのグループを集める際に「住吉会の威力」を利用したと認定した。同法では、代表者が上納金システムで利益を享受する立場にあり配下の「威力利用資金獲得行為」に関する損賠責任を負う。
警察庁によると、特殊詐欺の30年の認知件数は1万6496件で、被害総額は363億9千万円。2686人が摘発され、うち625人が暴力団構成員や周辺者。警察が「主犯」や現場の「指示役」など中核と認めた容疑者の半数近くが暴力団関係者だった。