「日本海」尊重も…海域表示ルール協議の仲裁案 国際機関、来春にも


 日本海の呼称をめぐり韓国や北朝鮮が「東海」への改称や併記を主張している問題で、世界の海洋名称をまとめた指針「大洋と海の境界」を刊行する国際水路機関(IHO)が仲裁案をまとめたことが20日、分かった。日本海の海域を「Japan Sea」(日本海)と記載した現指針を尊重する一方、海域の表示に関するルールづくりの要否を話し合うよう提案。来年4月に開催予定のIHO総会で同案は報告され、多国間の議論が本格化する見通しで、日本海呼称をめぐる日本政府の対応は重要な局面を迎える。

 IHOは20日、4月から複数回開かれた日本、韓国、北朝鮮の非公式協議を踏まえたマティアス・ヨナス事務局長の報告をホームページに掲載。それによると、日本海が単独記載されている現行のIHOの指針「大洋と海の境界」について公的な有効性を認め、今後も活用するとした。

 一方、指針が世界各国の海図作製に活用される実情などを指摘。現指針は1953年刊行の紙製で長い期間が経過し、各国がデータ更新や精密化へ改訂が必要との認識で一致しており、デジタル化した新指針の作製を目指し、海域表示に関するルールづくりの要否についての議論を提言した。

 提言を踏まえ、来年4月に開催予定のIHO総会で日本海海域の表示などについて議論が始まり、多国間の駆け引きも活発化するとみられる。日本政府はこれまで、呼称の表示について「日本海は国際的に確立した唯一の呼称で、変更する必要性も根拠もない」などと主張しており、韓国や北朝鮮との厳しい議論が続くことになる。

 韓国と北朝鮮は92年の国連会議で、日本海の呼称について「日本の植民地主義の結果」と初めて問題提起。「東海」への改称を求めていたが近年は日本海との併記を訴えている。IHOの現指針は改訂が不可欠との認識で各国が一致し、1970年代から議論が始まったが、近年の日本と韓国・北朝鮮の対立もネックになり進展しなかった。

 こうした中、韓国は各国関係者への積極的なロビー活動を展開。IHO側は日本に対し指針廃止の可能性も示唆して、今後の対応を協議するよう強く要請し、今年4月以降、日本政府は外務省局長級らが参加する韓国と北朝鮮との非公式協議を複数回、開催した。ただ、対立は決定的で議論は平行線をたどった。



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