首相、習主席来日時に日中新文書発表を示唆 首脳会談で尖閣自制も要求





中国の習近平国家主席(右)に出迎えられる安倍首相=23日、北京の人民大会堂(共同)
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 【北京=原川貴郎】安倍晋三首相は23日午後(日本時間同)、北京の人民大会堂で中国の習近平国家主席と会談し、来年4月で調整している習氏の国賓来日に向け準備を進めることで一致した。首相は来日時に、国交を正常化した日中共同声明(1972年)などに続く第5の政治文書の発表を検討していることを示唆した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での中国公船の挑発活動について自制を強く求めるなど、懸念についても率直に伝えた。

 首相は会談で、習氏の国賓来日について「極めて重視している」と強調した上で「日中関係を次なる高みに引き上げ、地域の平和、安定、繁栄に大きな責任を有する両国がしっかり責任を果たしていく決意を明確に内外に示したい」と述べた。習氏は「私と首相が緊密な意思疎通を保ち、中日関係を新しい段階に押し上げていきたい」と語った。

 会談で直接の言及はなかったが、今後の日中関係のあり方を規定する第5の政治文書の発表を想定しているとみられる。

 両国間ではこれまで日中共同声明のほか、日中平和友好条約(78年)▽平和と発展のための友好協力パートナーシップ確立を打ち出した日中共同宣言(98年)▽戦略的互恵関係の包括的推進をうたった日中共同声明(2008年)-の計4つの政治文書がある。

 第5の文書は、経済や環境など世界の課題を見据えた内容とみられ、中国の孔鉉佑(こう・げんゆう)駐日大使は今年9月の講演で「条件が熟せば第5の政治文書を結ぶことに異存はない」と述べていた。

 会談は大阪市で開催した6月以来。23日の会談では北朝鮮の非核化に向けた連携を確認し、国連安全保障理事会決議の完全な履行が重要との認識で一致した。

 一方で、習氏は中国とロシアが提案した対北制裁緩和に関する安保理決議案への支持を要請したが、会談に同席した岡田直樹官房副長官は記者団に「制裁緩和は時期尚早だ」と述べた。

 首相は、習氏の国賓来日への反対論が日本国内にあることを念頭に、懸案にも言及した。「東シナ海の安定なくして真の日中関係の改善なし」との立場から尖閣諸島周辺での中国公船の活動の自制を強く要求。東京電力福島第1原発事故後の日本産食品輸入規制の早期解除や拘束されている日本人の早期帰国を求めた。

 新疆(しんきょう)ウイグル自治区を含む中国の人権状況も取り上げ、透明性のある説明を要求。香港情勢について「大変憂慮している」と伝えた。習氏は「中国の内政問題だ」との認識を示した。

 習氏は「小異を残して一致点を求め、積極的に協力することが、新時代の中日関係を発展させる共通戦略の手引きになる」とも主張した。

 首相はこの後、四川省成都に移動。24日に開かれる日中韓3カ国首脳による日中韓サミットに出席する。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とも1年3カ月ぶりに会談する。



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