著作権者の許可を得ずに、漫画などをインターネット上に公開した「海賊版サイト」と知りながら、ダウンロード(DL)する行為の違法化に向けた議論が進んでいる。来月にも文化庁の有識者検討会で報告がまとまる方向で、通常国会での著作権法改正案提出を目指す。規制対象を著作物全般に広げようとして頓挫した以前の案から、今回は規制対象とはならない例外を示すなど条件緩和にかじを切った。
■相次いだ不安
「インターネット利用の自由が損なわれる」「表現の自由の規制、言論弾圧、情報収集の萎縮、文化の衰退などにつながる」
文化庁が9~10月に実施した海賊版サイトDLに関する意見公募で、個人から寄せられた主な意見だ。DL違法化について、個人では8割超が反対した。
国内最大規模の海賊版サイトだった「漫画村」(閉鎖)の被害額が3千億円以上に及ぶとの試算もある。こうした損害を防ぐため、DL違法化が昨年、議論され始めた。しかし、文化庁が当初示した案は、現行の著作権法で音楽と映像に限定されている違法対象を、漫画や小説、写真といった「静止画」を含む著作物全般に拡大。悪質な行為に刑事罰を科す内容だった。
パソコンやスマートフォンで閲覧したネット画面を保存する「スクリーンショット」(スクショ)に、違法画像が入り込むことまでが規制対象となる恐れがあり、懸念の声が続出。被害当事者である漫画界からも「創作の萎縮を招く懸念が大きい」といった反対もあり、3月に法案の国会提出が見送られた。
■軽微な行為はOK
再び議論が始まったのは今年秋。11月に文化庁の有識者検討会の初会合が開かれ、文化庁は軽微な行為については適法とする新たな案を示した。
例えば、違法にならない対象として、スクショで違法画像が付随的に入り込んだケースのほか、数十ページの漫画の1コマや数百ページの小説の1~数ページを明記。当初案への懸念を受け、規制対象を一部緩和した。