あおり運転「怒りが原因」 アンガーマネジメントに注目






 社会問題化する「あおり運転」の対策として、怒りを鎮める「アンガーマネジメント」という心理トレーニングに注目が集まりつつある。ドライバー心理を理解し、簡単なルールを実行することで、危険な運転を自制しようとする手法だ。日本アンガーマネジメント協会(東京)は「あおり運転は誰もが容易に加害者にも被害者にもなる犯罪」とし、一人一人の取り組みが重要だと呼びかける。

 のどかにランニングをしていた男性が、ぶつかりそうになる自転車や前をゆっくり走る親子にいらだち、次第に赤く燃え上がって親子を追い回す。最後はブレーキ音が響き、「怒りは、速度で、凶器に変わる」という字幕の後に追突した2台の車を映し出す-。

 自動車販売会社「岡山トヨペット」(岡山市)が紙人形を車に見立て、いらだちがドライバーをあおり運転へと駆り立てる様子を描いた90秒の動画だ。5月に特設サイトで公開すると56万回以上再生された。「あおり運転の根幹は怒り。そう意識すれば対処できるかもしれない」と話すのは、企画した同社の川北秀明さん。同協会と協力し、サイトではアンガーマネジメントの手法を紹介している。

 ポイントは、腹が立っても怒りがピークを越えるとされる6秒間は待つ▽家族の写真など大切なものを見えるところに置く▽落ち着く言葉を言い聞かせる▽深呼吸する-の4つ。同協会の安藤俊介代表理事は「ドライバーは車を操っているという万能感を感じやすく、それを邪魔されるといらっとしてしまう。その衝動に支配されないように、現実に戻るきっかけを作ることが大切だ」と指摘する。

 安藤代表理事によると、米国ではあおり運転を含むドライバーの報復行為は「ロードレイジ(路上の怒り)」と呼ばれ、30年以上前から社会問題化。加害者には裁判所がアンガーマネジメント講習の受講を命じることもあるなど、心理トレーニングが対策として広く受け入れられているという。

 日本では平成23年、米国組織の支部として協会が誕生。さまざまな場面での応用が可能として、昨年は約24万人が講習を受講した。あおり運転対策では、ドライバー心理を理解するため、愛知や石川の両県警なども捜査員らの研修に採用。同協会では自動車メーカーなどと協力し、車に怒りを緩和させる装置の導入なども検討しているという。



Source link