英首相、対米関係で苦慮 ファーウェイやFTA交渉めぐり






 【ロンドン=板東和正】来年1月末の欧州連合(EU)離脱を目指す英国のジョンソン首相が対米関係に苦慮している。米中対立の一因である第5世代(5G)通信網への対応や米国との自由貿易協定(FTA)といった難題に直面しているためだ。ジョンソン氏が「蜜月の仲」とされてきたトランプ米大統領との接触を避けているとの報道もあり、米英が緊密な関係を維持できるか不安視もされている。

 英メディアは最近、ジョンソン氏がトランプ氏から新年に米ホワイトハウスに招待されたものの、乗り気ではなく、「訪問を渋っている」と報じた。

 トランプ氏はウクライナ疑惑で弾劾裁判を控えており、ロイター通信などによると、英首相官邸関係者は弾劾問題に引きずり込まれることを警戒しているという。疑惑を否定するトランプ氏にジョンソン氏の言動が利用されかねないと恐れているようだ。

 英議会では年明けからEU離脱協定案の最終審議が行われる。英与党・保守党には発言が人種差別的としてトランプ氏を嫌う議員もいるだけに、訪米で反発を招いて、審議への協力を得にくくなるようなリスクも避けたい考えがあるとみられる。

 対米関係の悩みはこれだけではない。その一つが、トランプ氏が安全保障上の理由から5G通信網からの排除を呼びかける中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への対応だ。

 ジョンソン氏は4日、ロンドンで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で「ハイテク分野に関して中国の課題を認識すべきだ」と述べ、トランプ氏に同調する姿勢を見せた。だが、その翌日、テレビ番組でジョンソン氏が華為のスマートフォンを用いて「自撮り」する様子が放映され、英メディアは華為を完全に排除することはできないと予測する。

 ジョンソン氏は年内に華為への対応を決めるとしていたが、まだ結論は示されていない。オブライエン米大統領補佐官は今月下旬、英紙で華為使用に伴う危険を改めて警告したが、英国ではインフラ整備に中国マネーも流れ込んでおり、離脱後の経済パートナーとして中国にも配慮せざるをえない事情を抱えている。

 英国がEU離脱後に米国と始めるFTA交渉では、トランプ政権が米国の農家や医薬品メーカーに英市場を開くよう厳しい要求を突きつける構えとされる。低価格の米国産品が押し寄せれば、英企業を圧迫する恐れがあり、ジョンソン氏は「米国は極めて手ごわい交渉相手」と警戒を高める。

 英紙フィナンシャル・タイムズは、米大統領選が来年行われることから交渉で進展はほとんど見込まれないとも分析。交渉が長引くことが予想されている。



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