【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が毎年元日にその年の施政方針を発表する「新年の辞」の読み上げが1日午後1時現在も放映されていない。このまま新年の辞の発表が見送られれば、正恩体制発足後の2013年以降で初めてとなる。
1日付の党機関紙、労働新聞も新年の辞を掲載せず、代わりに昨年12月28日から4日間にわたって開かれた党中央委員会総会の結果を詳しく報じた。
通常、新年の辞の放送は事前に予告され、朝鮮中央テレビは昨年、午前9時から放映した。事前に綿密な収録が必要で、12月31日までの4日間を費やした異例の総会開催で、物理的に準備する余力がなかった可能性がある。
正恩氏は、非核化などをめぐる米朝交渉の期限を一方的に昨年末に指定したため、新たな対米方針を討議する総会も年末に設定せざるを得なかった状況も影響したようだ。
1年の指針を内外に宣言する最重要行事の進行をあえて変更させるほど、対米関係が膠着(こうちゃく)化した現状を正恩氏が深刻に受け止めていることを物語っているともいえそうだ。