特殊詐欺事件は年々ずる賢くなっており、ターゲットになった高齢者が誰にも相談できないように「だましの電話」を切らずにしゃべり続ける手口も現れている。さらに、キャッシュカードをだまし取る形の特殊詐欺事件が最近多発している岡山県警の担当者によると、地方都市では注意すべき場所があるのだという。それは幹線道路沿いだ。
相談する暇を与えない
「3月ごろにお返しするお金がある。3月末までに手続きをしないといけないが、手続きに必要な書類は届いていないか」
12月19日午後、岡山市内に住む80歳の女性宅に銀行の行員を名乗る男から電話があった。女性が「そんな書類は届いていない」と答えると、男は「これから行員を行かせるので、お金を振り込むためにキャッシュカードを渡して」と指示した。
女性は電話をしながら、夫名義の銀行のキャッシュカード1枚を家にあった封筒に入れて用意。ほどなくして自宅のチャイムが鳴り、女性は封筒を持って玄関に行き、現れた男に封筒を渡すと、男はすぐに封筒を持って帰った。
この間も電話はつないだまま。女性がキャッシュカードを渡したことを伝えると、「12月24日に返す」などといわれた後、電話が切れた。もちろんカードは返ってこず、後に現金100万円以上が引き出されていることが分かった。
犯人グループには、女性と電話で話し続けることで、女性が誰かに相談したり考えたりする暇を与えない狙いがあったとみられる。
なぜ幹線道路沿いが危険か
一方、同県倉敷市で今年9月、70代の女性がカードを奪われた事件は、被害者の手元に偽のカードを残すという安心感を悪用したものだった。
警官を名乗る電話で「振り込め詐欺の犯人を捕まえたら、あなたの名前を知っていた。お金が取られた可能性がある」として、出金確認の名目でカードを用意させた。カードを受け取りに来た男は女性に封筒を渡し、「ちゃんとこの封筒に入れて、念のために割り印を押して」と指示。女性が印鑑を取りに行っているすきに、あらかじめ用意していたポイントカード入りの別の封筒にすりかえ、この封筒をキャッシュカード入りの封筒だと信じ込ませ、女性に印鑑を押させた。女性が気づいたときには数百万円が引き出された後だった。