フジテレビの苦境を予想
はたして企業の未来は見通せるのか。今からちょうど10年前。’15年に本誌が行った『10年後「大きくなっている会社」「小さくなっている会社」』の誌面がSNS上で拡散され、「かなり当たっている」と評判になっている。
【一覧】これから10年後に大きくなる会社、小さくなる会社【全342社】
記事では、経済や企業に精通する識者8名に、日本の有力企業349社の中から「10年後に大きくなっていると思う会社」「現状維持はできていると思う会社」を選び、それぞれに◎、◯をつけてもらった。◎は2点、◯を1点で集計し、ゼロ点に近い企業は「10年後に小さくなっている会社」とも言える。
例を挙げると、16点満点中、トヨタ自動車は13点、デンソーは15点、ファナックは14点、三菱商事は13点、リクルートHDは12点、ユニクロを展開するファーストリテイリングは11点。これらは押しも押されもせぬ世界企業として、この10年で着実に業績を伸ばしてきた。
片や、日産自動車やカルソニックカンセイ(現マレリHD)は0点、フジ・メディア・HDは1点、ドラッグストアのツルハHDは0点だった。
日産はカルロス・ゴーン会長が失脚してジリ貧に陥り、本田技研工業との統合を模索している。日産系自動車部品メーカーだったカルソニックカンセイはマレリと名前を変えたものの、今も業績不振に苦しむ。フジテレビは言わずもがな。ツルハは規模を拡大するため、ドラッグストア最大手のウエルシアHDとの経営統合に追い込まれた。
複数の識者の見識を総合すれば、かくも信頼できる未来予測を行うことが可能なのだ。
未来予測に欠かせない3つの要素
そこで本誌は再び、6名の識者に日本の有力企業342社の先行きを分析してもらった。結果をまとめたのが、次ページからの表だ。細かく見ていく前に日本企業が今後10年で直面する時代の荒波を分析しよう。
百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏がこう語る。
「私は未来予測を専門としていますが、これまでに比べて今後10年の予測は格段に難しくなっていると感じています。それには3つの要素があります。
一つはAIの進化です。これが企業にどういうインパクトを与えるかがまだわからない。中国企業『DeepSeek』が安価な費用で高性能の生成AIを開発したとされています。これが本当だとすると、これまで言われていたように、巨大なデータセンターや高度な機械学習が不要になってしまう。現在、マイクロソフトやメタが生成AI向けに10兆円単位の設備投資を行うとしていますが、これを5兆円規模に抑えると言い出したら、今の生成AI相場が崩れる可能性があります」
鈴木氏は、’90年代後半から’00年代初頭にかけての「ITバブル」とその崩壊のような事態が再び世界を襲うと言うのだ。
「次の不安要素は、気候変動です。トランプ大統領は、地球温暖化対策の国際的な取り決めである『パリ協定』から離脱しました。これまでの脱炭素化の流れが一変する可能性があり、10年後には温暖化が取り返しのつかないところまで進んでしまうかもしれません。
そして最後に、日本社会の地盤沈下がどこまで進むかわからないこと。人口減少は想定内としても、財政問題や円安など、想定以上のことが起こりそうで悪い予感しかしません。これからの10年はこれまで以上に波乱が起きるのではないか」(同前)
次回記事『トヨタ、ホンダ、スズキはどうなる?激動の自動車業界の10年後を読み解く』へ続く。
「週刊現代」2025年2月15日号より
週刊現代(講談社・月曜・金曜発売)