【国際情勢分析】総統選、野党候補の韓国瑜氏は「台湾のトランプ」か





台北郊外の新北市で開いた選挙集会で演説する国民党の韓国瑜候補=昨年12月8日(田中靖人撮影)

 1月11日に投票される台湾の総統選に野党・中国国民党から立候補している韓国瑜高雄市長(62)は、「台湾のトランプ」とも称される。短いキャッチフレーズを連呼し、特定メディアの支援を頼りに一部の熱狂的な支持を集めてきた姿が、トランプ米大統領と似ているからだ。ただ、選挙戦の終盤になり多数派メディアとの関係が悪化。特定の支持者だけを意識した選挙戦術にも疑問符が付いている。(台北 田中靖人)

■中国寄りメディアが支持

 「台湾安全、人民有銭(台湾を安全に、人々を金持ちに)」

 韓氏は選挙集会で必ずこのフレーズを口にする。2018年11月に当選した高雄市長選では、この後に「高雄大発財(高雄は大もうけ)」が続いた。演説では個別具体的な政策ではなく、「庶民の生活苦」に同情を示し、現政権は「汚職で腐敗し、良い生活をしている」と現状への不満をあおる手法が目立つ。内外のメディアや研究者は、韓氏を「ポピュリスト(大衆迎合主義者)」だと指摘する。

 米国でトランプ氏に友好的な「フォックス・ニュース」に相当するのが、台湾では「中天テレビ」だ。4大紙の一つ、中国時報と同じ「旺旺中時メディア集団」に属し、親中・反日的な報道姿勢で知られる。同集団の董事長(会長)の蔡衍明(さい・えんめい)氏は中国での菓子事業で成功し、12年9月に台湾の漁民が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で日本への抗議活動をした際、漁船約60隻の燃料代を私費で寄付した。

 台湾で電信、通信、放送事業を監督する「国家通信伝播委員会(NCC)」は今年3月、中天テレビのニュース番組で、政界の人物に関する放送の88%が韓氏を取り上げたものだとして改善を命令。他にも与党・民主進歩党の政治家を批判する報道が根拠を欠くとして、罰金を科したり注意をしたりしている。

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