【癒着 IR汚職】(下)陣中見舞い「領収書は要りません」 ブローカー、政界に浸食

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【癒着 IR汚職】(下)陣中見舞い「領収書は要りません」 ブローカー、政界に浸食

 「蝦夷富士(えぞふじ)」とも称される美しい山容の羊蹄(ようてい)山を望む北海道ニセコ町の比羅夫(ひらふ)温泉街。外国人が多く往来する道内屈指の観光エリアだ。ここに、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件の贈賄側の中国企業「500ドットコム」元顧問、紺野昌彦(48)=贈賄容疑で再逮捕=が定宿とするホテルがある。標準価格1泊4万6千円。紺野はほぼ月1回のペースで訪れていた。

 待ち合わせたロビーに、紺野は決まってボストンバッグを手に現れた。「はい、これ」。不動産売買契約書にサインを交わすと紺野はバッグから100万円の束を取り出した。

 毎回のように紺野と会っていたという留寿都(るすつ)村幹部の男性は「5千万とか8千万とか札束をバッグに入れて現金で土地を買う。この2年、周辺の土地を彼が動かしていた」と話す。

 IR誘致を目指していた村幹部らは平成30年4月、紺野の紹介でIR担当の国土交通副大臣だった衆院議員、秋元司(48)=収賄容疑で再逮捕=の執務室を訪れた。「IRをぜひやりたい。格段のご尽瘁(じんすい)を賜りたい」と頭を下げたと振り返る幹部は言う。「副大臣なんて天下人だよ。会えるのは彼のおかげだ」

 この村幹部は紺野をあだ名で「マサマサ」と呼ぶ。紺野はIRへの参入を目指す「500」社の窓口として信頼を得る一方、IR誘致実現を見据えていたのか、個人的に不動産ビジネスにも手を出していた。

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 「どうやったらIR議連の勉強会に入れますか」

 IRコンサルティング業の男性は29年5~6月ごろ、「500」社日本法人元役員の鄭希(37)=贈賄容疑で再逮捕=から尋ねられてあきれたのを覚えている。MGMリゾーツ・インターナショナル、ラスベガス・サンズといった大手カジノ業者が既に勉強会に入り込み、先行していたからだ。

 紺野と鄭らは衆院解散前日の29年9月27日、香港から現金計1500万円を“密輸”。これが政界工作資金となり、翌日、秋元に300万円を渡したほか、10月までにIR議連の幹部ら5人の衆院議員側に「陣中見舞い」名目で100万円ずつ渡したとされる。

 紺野は「領収書は要りません」と言って秘書らに渡したという。5人のうち明確に受領を認めたのは1人だけだが、検察関係者は「議員本人に認識はなかったかもしれないが、渡っているのは間違いないだろう」と推察する。

 「『500』社は日本に来たがっている。秋元先生に会わせるだけで報酬がもらえる」。紺野は男性に自慢げに語っていた。顧問報酬は1千数百万円らしいと伝え聞いた。後発だった「500」社がカネに物を言わせて政治家を頼り、橋渡し役として紺野を雇った構図が浮かぶ。

 「500」社は29年8月に那覇市でシンポジウムを開いてIR参入を表明したが、すぐに留寿都村に足場を移した。それも30年秋頃には暗礁に乗り上げた。

 そこで紺野は秋元と一緒に広東省深●(=土へんに川)(しんせん)の本社とマカオのカジノ視察へ招待した衆院議員、白須賀貴樹(44)に地盤の千葉市長、熊谷俊人(41)を紹介してもらった。31年1月に2度面会したが、話は具体化しなかった。

 企業と政治家をつなぐ役割を果たす紺野のことを、ある捜査関係者は「ブローカー」と呼んだ。

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 東京地検特捜部は30年夏、子供の医大合格や飲食接待を賄賂とする文部科学省を舞台にした汚職事件で文科官僚2人を起訴した。この事件で贈賄側だったのが「霞が関ブローカー」と呼ばれるコンサルティング業の男だった。接待相手は複数省庁の官僚のほか、元閣僚ら国会議員も含め10人前後に上るとみられた。

 今回の事件でも霞が関や永田町でうごめくブローカーを起点に、口利きを通じた政治家と業者の癒着構造が明らかにされつつある。

 特捜部は22年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改竄(かいざん)事件などの不祥事の影響で、政界を含め大型事件の摘発から遠ざかり、現職国会議員を逮捕するのは約10年ぶりとなった。収賄容疑では実に17年ぶりだ。

 ある特捜部OBは今回の事件をこう評価する。「特捜部が事件を摘発してこなかったから政界も官界もたがが緩み、業者に付け入られる隙を与えているのだろう。特捜部は常に恐れられる存在である必要がある」(呼称・敬称略)

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 この企画は市岡豊大、山本浩輔、宮野佳幸、吉原実が担当しました。

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