大規模災害時の医療拠点「基幹災害拠点病院」に和歌山県内で唯一、指定されている和歌山県立医科大学付属病院(和歌山市紀三井寺)は平成7年の阪神大震災を教訓に、耐震など自然災害への対策を本格的に進めてきた。近年は、今後30年以内に70~80%の確率で起こるとされる南海トラフ巨大地震を想定し、防潮ゲート設置や空路搬送ルート確保にも取り組むなど、備えを一層充実させている。(井上裕貴)
付属病院が市内の七番丁から現在地に移転したのは平成11年。この4年前に阪神大震災が発生したばかりで、災害対策は当初、耐震に重点を置いていた。
しかし、23年に東日本大震災が発生。巨大津波の危険性が注目されたため、県は県内各地の津波浸水想定図を作製した。
想定図によると、南海トラフ巨大地震が発生した場合、付属病院のある一帯は2~3メートル級の津波に襲われる可能性がある。そのため県は本格的な対策強化を進めてきた。
津波被害を防ぐため、敷地の出入り口に、金属製の防潮ゲートを設置した。津波警報が発令された場合は速やかに閉じ、建物を守る。さらに建物自体にも防水板を取り付けており、地下への水の流入を防ぐ。
非常用電源などが集中する「エネルギーセンター」には密閉性が高い防水扉を採用。センターから病院に延びている地上近くの送電線も、より高い位置に迂回路(うかいろ)を設け、非常時の電源確保に備えている。
また、水や食料、自家発電用の燃料も備蓄。外部からの供給が途絶えても、最低3日は病院機能を維持できるとしている。