【シンガポール=森浩】中国の習近平国家主席が17日、訪問先のミャンマーに到着した。2日間の日程で、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相らと会談する。ミャンマーでは中国との関係強化による投資額の増加などに期待の声が上がる一方、過度の接近を警戒する向きもある。
「巨大な隣人(中国)は無視できないほど強力だ。習氏の訪問はチャンスとリスクの両方をもたらす」
ミャンマーのニュースサイト「イラワディ」は今回の訪問をこう分析した。
「チャンス」は経済面だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、2018年度の中国からミャンマーへの直接投資は5億5800万ドル(約610億円)。政府は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた投資によるインフラ整備の加速を期待する。
ミャンマーにはイスラム教徒少数民族ロヒンギャ弾圧をめぐって国際的な風当たりが強まっている。ロヒンギャ弾圧がジェノサイド(民族大量虐殺)条約に違反するとして告発され、国際司法裁判所での審理も進む。中国は一貫してミャンマー政府の立場を支持しており、ミャンマーは中国との関係を強固にし、国際的な孤立を避けたい考えだ。
一方、ミャンマー軍の一部は中国の動きを警戒する。ミャンマーでは政府と少数民族の武装勢力との間で自治権をめぐる紛争が続くが、昨年11月の軍発表によると、中国との国境付近を本拠とする「タアン民族解放軍」拠点から押収された武器の大半が中国製だった。中国は和平の仲介役を担う考えを示すが、軍内部の不信感はぬぐえない。
また、かつて軍事政権を支援した中国に対してミャンマー世論には「拒否反応のようなものがある」(地元記者)という。政府が親中の色合いを強めすぎれば反発を招く可能性がある。