ホラー映画にコミカルなドラマ、時代劇…。多くのジャンルでさまざまな役を演じてきた。今回はセレブな暮らしを送る上昇志向の強い弁護士、仙台由貴子。「ここまで欲が強い人の役はやったことがないかも。『挑戦だな』と思います」
誰しも抱える秘密に、謎めいた事件がからむサスペンスドラマ。由貴子の華やかな暮らしも実態は謎だらけで、向井理(おさむ)演じる別れた夫は振り回される。「緊迫感をもって元夫を振り回す。雰囲気に気を付け、夫婦だったときとの温度差も出したい」と語る声のトーンは由貴子のイメージ通り、秘密めいている。
ただ、2度目の共演という向井の話題となると表情は一変。「向井さんは笑っちゃうくらい見た目通りの人で、真面目で誠実。完璧なんですよね…。どこかでほころびを探したいな」と、いたずら心をのぞかせた。
豊かなキャリアを誇る女優として原点となった作品は、映画初主演作「リング0 バースデイ」(平成12年公開、鶴田法男監督)だ。
「お芝居のことをよく分かっていなくて、演じることに気恥ずかしさもありました。鶴田監督は、芝居は人に見せるものだという意識を芽生えさせてくれた」。また、ドラマ「TRICK(トリック)」ではシニカルな笑いなどに挑戦。「こういうお芝居もいいんだなと勉強になったし、幅が広がった」と振り返る。
活躍を続ける中、30年に出産。しばらく仕事を離れていた。
役作りは、共演者の呼吸や監督の意向を取り入れる余裕を持ち、じっくりとイメージを固めていたが、復帰後は時間が少なくなった分、イメージをより固めておくことを意識している。「役へのアプローチがより深くできるようになった気がします。その過程はすごく楽しいし、演じるって面白い」と語る。
今作のようなシリアスな役柄の場合、スタッフから「普段は明るいのに、役に入るとものすごく怖い」と言われることも。「以前、同じような雰囲気の作品に出たときも、スタジオに入ると『怖い人が来た!』みたいな空気感になったんですよ。どうしてだろう?」と周囲のスタッフたちをキョロキョロ。
撮影の合間には、スタッフをいじってコミュニケーションを深めるタイプだ。だから向井をいじる“ほころび探し”も楽しいらしい。 (渡部圭介)
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【プロフィル】仲間由紀恵(なかま・ゆきえ) 昭和54年生まれ、沖縄県出身。平成7年にテレビドラマに出演。12年の「リング0 バースデイ」で映画初主演を果たした。「TRICK」「ごくせん」などの出演ドラマは人気を博し、シリーズ化。琉球王朝末期を描いたドラマ「テンペスト」では、女であることを隠している上級官僚と女に戻るときの側室という“一人二役”を好演した。26年9月、俳優の田中哲司と結婚し、30年6月に双子の男児を出産した。