□『日本と中国はまったく違います 台湾人記者の駐日40年』
「民主主義のとりでを守った」
先の総統選で蔡英文氏を勝利させた台湾は、中国にノーの意志を突き付けた。門田隆将氏の推薦文が示す通り、本書にはその反中国最前線・台湾からの告発が満載だ。
台湾の最大手紙「自由時報」などで約40年間、駐日特派員を務めた著者は、中国による「一国二制度」は強姦(ごうかん)魔が家に女性を招き入れる甘言、中国は1000発以上のミサイルの照準を台湾に向け、台湾メディアや反社会的勢力を買収していると事例を挙げ訴える。
そんな中国とまったく違う価値観を共有するのが日本と台湾だと著者。東日本大震災や、李登輝元総統と日本人同級生、台湾少年工の逸話など著者自身の体験を通した日台の絆の物語は涙なくしては読めない。天皇陛下のご即位に際し、日本に祝意を伝えようと昭和天皇ゆかりの桜の里帰りを企画した著者は、桜を育てる台湾と伐採する小中華・韓国の違いを述べ、台湾は日本に、韓国は中国に似ているとも指摘している。
一方、李元総統のビザ発給に当時の河野洋平外相が反対、『広辞苑』は台湾に関する間違いを掲載するなど日本の中国忖度(そんたく)も浮き彫りに。台湾の意志に日本はどう応えるのか。今読みたい一冊。(産経新聞出版・1400円+税)