「減胎手術」ルールもなく、表面化もせず…大阪地裁判決で問われた問題





判決後、記者会見する諏訪マタニティークリニックの根津八紘院長(手前)ら=28日午後、大阪市

 不妊治療で五つ子を妊娠したのに1人も出産できなかったのは、子宮内の胎児の数を減らす「減胎(げんたい)(減数)手術」を受けた際の病院側のミスが原因として、大阪府の30代女性と夫が産婦人科医院を運営する医療法人に約2300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。

 訴えは棄却されたものの、冨上智子裁判長は「減胎手術は相当数行われているが、実施を公表している医療機関はほぼなく、症例報告や文献も少ない」と、減胎手術の現状に言及。学会などによる正式な運用指針が整備されていない現状を踏まえ、「医学的知見が一般に確立していたと認めるに足りる証拠はない」と、知見不足を指摘した。

 多胎妊娠時の母子のリスクを下げるため、一部の胎児を薬物注射などの手法で減らす減胎手術だが、その不透明な実施態勢の現状が、いま問われている。

■「命の選別」「わらにもすがる思い…」

 減胎手術をめぐっては、以前から実施する上でのルール整備が不十分だと指摘されている。また、「命の選別」などといった批判もあり、今も実態は不明な点が多い。

 2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠する「多胎妊娠」は自然妊娠でもあり得るが、不妊治療の際に妊娠率を上げるため、体外受精で複数の受精卵を戻したり、排卵誘発剤を投与したりすることで起きることも多い。現在は体外受精で戻す受精卵は原則1個とされ、このケースによる多胎は減少したが、排卵誘発剤による多胎は今も起きている。

 早産・流産や母親の生命の危険を避けるため、実施されているとみられるが、その実態を明らかにしている医療機関はほぼない。

 平成15年に厚生労働省の審議会が「三つ子以上の妊娠に限って容認する」とする報告書をまとめたが、その後は議論が進まず、減胎手術のガイドラインは今も存在しない。それぞれの医師や医療機関が独自のやり方で実施しているのが現状とみられる。

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