2024年7月20日に投開票が行われた参院選において、昨秋の衆院選に続き自民・公明両党が過半数を割る大敗を喫する一方で、結党6年目の参政党は1議席から14議席へと大きく躍進しました。当初目標の6議席を大幅に上回る結果となり、参院では予算を伴わない法案を単独で提出できる基盤を確立しました。
参政党の躍進とその背景
今回の選挙で参政党は、消費税の段階的廃止や外国人の過度な受け入れ反対といった「日本人ファースト」の政策を掲げました。現在の物価高騰や外国人問題が主要な争点に浮上する中、これらの党の主張は国民の一定層からの求心力を高め、支持拡大に繋がりました。全国45選挙区全てに候補者を擁立し、全国比例区では10人を擁立するなど、積極的な選挙戦を展開しました。しかしその一方で、選挙期間中には候補者や党幹部の発言が連日のように物議を醸し、報道の焦点となる場面も多く見られました。
候補者の核武装発言が波紋
特に注目されたのは、全国最多32人が7議席を争った東京選挙区で得票数2位となり当選した新人・さや氏(43)の発言です。7月3日、日本テレビ系のYouTubeチャンネル「日テレNEWS」で配信された選挙番組に出演した際、安全保障に関する見解を問われ、「核武装が最も安上がりであり、最も安全を強化する策の1つだとは考えています」とコメントしました。さや氏はこの発言を“個人的な考え”としましたが、その不用意な核武装に関する主張は、党全体への批判にまで発展しました。参政党の公式HPに掲載されている「参政党の政策2025」では、核に対するスタンスとして「核保有国に囲まれた日本を守るため、厳しい国際社会の現実を踏まえ、核廃絶を長期的な目標としつつ、今の日本を守るために、核保有国に核を使わせない抑止力を持つ」と明記しており、候補者の発言との間に乖離が見られました。
神谷代表の「核以外の抑止力」発言と世論
参院選の投開票後も、参政党の神谷宗幣代表(47)が、防衛に関する「抑止力」について見解を述べる場面がありました。7月20日放送の『有働Times』(テレビ朝日系)に出演した際、MCの有働由美子氏から“抑止力とは具体的にどのようなものか”を問われると、神谷氏は「わが国はアメリカの『核の傘』の下にあると言われるが、その実効性は不確かなので、わが国も実際にニュークリアシェアリング(核共有)という形か、核とは違う兵器を作るのか、選択肢を出しながら議論をしていくことが大事」と回答しました。
参院選で躍進した参政党の神谷宗幣代表
さらに有働氏が「核以外の抑止力とはなにか。核を持った国々に囲まれている中で」と具体的に問いただすと、神谷氏は以下のように述べました。「将来的に『バリア』のようなものが作られるかもしれないし、『電磁波』のようなもので、敵の機能を麻痺させるようなパルス攻撃もあるかもしれません。それはまだ実験中だと思いますが。とにかく“参政党は核を持つ”と言わせたいのかもしれませんが、我々は言いません。そういう質問はおやめください」。核保有を徹底的に否定した神谷氏でしたが、核以外の抑止力として「バリア」といった具体性に欠ける展望を語ったことに対し、SNS上では驚きと批判の声が相次ぎました。「核バリアは草 何十年かかるんだよ」「バリア的発想の防衛装備を選択肢から除外しないのは大いに結構なんだが『バリア』っていう言葉が出るような人間ははっきり言って幼稚」「つまり神谷さん 無策なんですね笑 核から日本を守る手段がバリアって」といった投稿がX(旧Twitter)で見受けられ、その発言の現実性や成熟度について疑問が投げかけられています。
今回の参院選で躍進を遂げた参政党は、その政策や主張が世間の注目を集める一方で、国防や安全保障といった重要課題に対する具体的な見解を巡る議論が今後も続くことが予想されます。国民の期待に応えつつ、政策の具体化と説明責任が今後の課題となるでしょう。