中東和平案 米「負けを認めよ」とパレスチナに迫る



記者会見で中東和平案について説明するトランプ米大統領=1月28日、ホワイトハウス(ロイター)

 【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領は28日発表した新中東和平案について、イスラエルとパレスチナ自治政府に「ウィンウィン(双方に有益)となる機会を提供する」と強調した。和平案は、従来の国際合意にとらわれず、実質的に新規まき直しの交渉を提唱するものだ。

 トランプ氏はホワイトハウスで和平案に関し「パレスチナ国家の樹立がイスラエルに対する安全保障上のリスクとなる問題を解消した、現実的な2国家共存策だ」と強調した。

 トランプ政権高官も記者団に対し、「パレスチナは当初は和平案に疑心を抱くだろうが、いずれ交渉入りに合意するだろう」と期待を表明した。

 トランプ氏の娘婿であるジャレド・クシュナー氏らが約3年間かけて作成した和平案は約80ページにわたり、2014年に和平協議が頓挫して以降の米政府の和平提案では最も詳細な内容であるのは間違いない。

 そして、国連安全保障理事会や国連総会、過去の中東和平合意を必ずしも踏襲せずに思い切った提案をしているのも特徴だ。

 特に、イスラエルとパレスチナ国家との境界線の線引きを大幅に変更したことは、2国家共存は「1967年の第3次中東戦争以前の境界線」を基準として進められるとした従来の国際合意から完全に逸脱するものだ。

 また、ガザ地区の南部に新たに一定規模の土地を提供し、開発を支援するとの提案には、不動産開発業者だったトランプ氏らしい発想が透けてみえる。

 和平案は、ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地についてイスラエルの主権を認め、エルサレムをイスラエルの首都と位置付けるなど、イスラエルに有利な内容なのは疑いない。

 しかし、パレスチナは経済および治安維持をイスラエルに大きく依存しており、双方の力関係を考えれば、例えば従来の境界線を基準とした2国家共存を双方が「対等」な立場で実現させるのは、現実問題として不可能に近い。

 トランプ氏の和平案を突き詰めれば、パレスチナに「負け」を認め、「グッド・ルーザー(良き敗者)」としてイスラエルと共生していくことを勧めたものだといえる。



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