【ワシントン=塩原永久】米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は29日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が、世界経済の新たな不透明要因になるとの認識を示した。具体的な影響を判断するのは「時期尚早だ」としたが、経済活動を下押しする可能性を見極める構えだ。
パウエル氏は会見で、現状の世界経済を「注意深く楽観視」していると言及した。米中が貿易協議で合意に達し、貿易摩擦が景気に冷や水を浴びせる懸念は緩和。貿易摩擦の打撃を受けてきた製造業の景況感が持ち直し、「底打ちの兆し」があるとして景気拡大の持続に自信を示した。
だが、その矢先、中国を中心に新型肺炎の感染者が急増している問題が浮上。パウエル氏は「少なくとも短期的に中国の生産活動」に影響する可能性があると警戒し、近隣国にも波及する懸念に言及した。
今回の新型肺炎をめぐり、欧米の経済専門家からは、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を上回る経済影響が出る可能性があると指摘され始めている。SARS当時に比べて中国の経済規模は拡大しており、中国の経済活動が落ち込んだ場合の世界経済に及ぼす影響も大きくなっているためだ。米CNBCテレビは、まだ足腰の弱い世界経済が「中国発で景気後退に向かう可能性を否定しきれない」とのエコノミストの声を伝えている。