《視点》ふるさと納税訴訟判決 地方自治の指針みえず






 大阪高裁が判決を言い渡したふるさと納税をめぐる訴訟は、自治体と国が法廷で争う最初の事例で、分権改革が進められてきた地方自治のあり方も問われた。判決は国側の主張を全面的に認めたが、地方自治に新しい指針を示したとはいいがたい。

 「ふるさと納税」のあり方をめぐり、大阪府泉佐野市と総務省の意見は食い違う。総務省側は「泉佐野市は制度の趣旨に反する寄付募集を行った」と認識。これに対し、市側は「返礼品は寄付額の3割以下、地場産品に限る」という国の基準に異論を唱えてきた。

 この点、判決は「対価の提供と誤解されるような過度な返礼品を誘因として寄付金の募集を行うことは、(ふるさと納税の)法的枠組みを甚だしく逸脱し、制度趣旨に反する」と国側の見解を容認した。泉佐野市の千代松大耕(ひろやす)市長は「今回の判決がすべてではない」と、国と最後まで争う姿勢を隠さなかった。

 同市は平成20年度決算で財政健全化団体に転落。25年度で脱却したものの財政はなお厳しい。千代松市長は法廷で「本市には有名な肉もカニもコメもない。多くの寄付が寄せられるのは人気の地場産品を返礼品にできる自治体」と訴えた。

 切実な事情は全国の多くの自治体が抱え、返礼品競争は過熱した。

 一橋大大学院の佐藤主光(もとひろ)教授(財政学)は「地方分権は地域間競争。総務省はもっと早く法律で明確なルールを定めるべきだった」と話す。一方、名城大の昇秀樹教授(地方自治論)は「地方分権の観点から自治体同士で解決すべきだった」と指摘する。

 地方分権一括法の施行などを機に、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に転換した。だが、税収不均衡は解消されず、財政難の自治体は国からの交付金や補助金に依存する。今回の訴訟は、真の地方分権がいまだ実現していない現実を突き付けた。(牛島要平)



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