「北方領土の日」の7日に東京都内で拓かれた「北方領土返還要求全国大会」での安倍晋三首相のあいさつ全文は次の通り。
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「令和2年北方領土返還要求全国大会」の開催に当たり、一言ごあいさつ申し上げます。
本日ご列席の皆さまをはじめ、全国各地で、北方領土問題の解決に向けて熱心に取り組んでおられる皆さまの日頃からのご尽力に、心から敬意を表するとともに感謝申し上げます。
戦後74年が経過した今もなお、北方領土問題が解決されず、日本とロシアの間には平和条約が締結されていない。この異常な状態に終止符を打つために、安倍内閣は全力を挙げて取り組んできております。2016(平成28)年の長門での首脳会談で、私とプーチン大統領が、自らの手で平和条約を締結するとの真撃(しんし)な決意を表明して以来、新しいアプローチで問題を解決するとの方針の下、日露の間でこれまでにない協力が実現しています。
ご高齢になられた元島民の皆さまが強く望んでおられる航空機によるお墓参りは3年連続で実現し、昨年は、これまで何年も訪問できなかった場所も訪問することができました。航空機によるお墓参り等、元島民の皆さまにとり、より負担の少ない往来を今後とも行うことができるよう、これからも尽力してまいります。
北方四島における共同経済活動も着実に進んでいます。昨年、観光およびゴミ処理の分野のパイロット・プロジェクトを実施しました。今後とも、地元の皆さまのご意見をよくお聞きしながら、日露双方の法的立場を害することなく、事業化の実現に向けて精力的に取り組んでまいります。
そして、平和条約については、こうした協力関係の進展の上に、交渉を前進させております。一昨年、シンガポールで合意した「1956(昭和31)年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる」との方針の下、昨年9月、プーチン大統領との間で、未来志向で作業を進めることを改めて確認いたしました。双方が受け入れられる解決策を見つけるための共同作業を精力的に進め、交渉を、一歩一歩、皆さまと心を一つにして、着実に前進させる考えです。
この全国大会の前に、元島民の代表の方々とお会いし、その故郷に対する思いを直接伺ってまいりました。「自由に島を訪問したい」「元気なうちになんとかこの問題を解決してほしい」とのお話を伺い、改めて、交渉への意欲を強くいたしました。皆さまの北方領土への切実な思いをしっかりと胸に刻み、領土問題の解決と平和条約締結の実現という目標に向かって、ひたすらに進んでまいります。
日本国民とロシア国民の互いの信頼関係、友人としての関係を増進させ、四島を友好の島にすることが何より重要です。交渉を進展させるためには、国民一人一人が、この問題への関心と理解を深め、政府と国民が一丸となって取り組むことが重要です。引き続き、カ強いご支援とご協力を賜りますよう、改めてお願い申し上げ、私のあいさつと致します。