子供の父親であることを法的に否定する「嫡出(ちゃくしゅつ)否認」の規定をめぐる2件の訴訟で、最高裁は1、2審の合憲判断を相次ぎ確定させた。国会の立法裁量を重視した2審の結論を維持した形だが、すでに法制審議会(法相の諮問機関)では規定見直しに向けた議論が進んでいる。
民法は結婚(再婚含む)から200日経過後に出産した子は現夫の子とみなす一方、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定すると規定している。女性が離婚直後に別の男性との間に子を出産すると、戸籍には前夫の子と記載されるため、これを避けようと出生届を出さず、子が無戸籍となる問題があった。
法務省によると、こうした無戸籍者は今年1月時点で784人。夫(元夫)の子になるのを避けようと出生届を出さなかったケースが約77%を占めている。
無戸籍者解消の観点から、法制審議会では一連の規定見直しを議論。「300日規定」については、出産時点で再婚していれば例外とする案などが検討されており、法務省は令和3年度中に民法改正案を国会に提出する方針だ。
確定した大阪高裁判決は、妻や子に嫡出否認の訴えを認めるかどうかも「国会の立法裁量に委ねられる」としており、速やかに立法的な解決を図ることが求められているといえる。