ココイチの「ありえない」ウーバー価格、背景に何が? 店舗価格との比較と利用者離れの兆候

学生時代、ココイチのロースカツカレー(当時の価格680円)は私の定番だった。100円プラスして大盛りにしたり、友人との挑戦で10辛に挑んだり、あるいは財布が寂しい時はポークカレー(当時の価格430円)で済ませることもあったが、ココイチでの食事はいつも楽しいひとときだった。

しかし今、ココイチのメニューを前にすると、思わず顔が引き締まる。かつて(約10年前)の価格と比べて、1.5倍近い価格設定になっているからだ。具体的には、ロースカツカレーは998円、ポークカレーは646円。手仕込とんかつカレーに至っては1192円となっている。国民の平均所得が長らく横ばいを続けるこの国において、気軽にココイチに立ち寄れる層は限られているのかもしれない。

ライターとして活動する傍ら、ウーバー配達員としても働いている私は、ウーバーイーツの価格設定に注目することが多い。そして現在、ココイチのウーバーイーツ価格は、まさに驚愕レベルに達している。

では、一体どのような価格なのか。例えば、ロースカツカレーは1694円、ポークカレーは1127円。手仕込とんかつカレーは、なんと2007円だ。これに加え、ウーバーイーツ利用時には、表示価格の約13%にあたるサービス料と、距離に応じて変動する配達手数料(100〜300円前後)が加算される。

つまり、ウーバーイーツを利用した場合、店舗価格の約2倍の支払いが必要となる計算になる。ロースカツカレー一つを注文するだけで、約2000円もの出費となるのだ。

ネット上で「ココイチ・ウーバー」と検索すると、「ココイチのウーバーはセレブ食」「もうちょい出せば焼肉に行ける値段」「頼むたびに値段が上がってる気がする」「最近ウーバーでは頼まなくなった」といった、驚きや戸惑いを隠せないユーザーの声が多数見受けられる。

ココイチのロースカツカレー。店舗価格は約10年前の1.5倍近くになり、ウーバーイーツでは2000円水準に達することも。(著者撮影)ココイチのロースカツカレー。店舗価格は約10年前の1.5倍近くになり、ウーバーイーツでは2000円水準に達することも。(著者撮影)

2020年からウーバー配達員(2025年4月からは出前館配達員も兼務)として活動している私の実感としても、ここ最近、ココイチの配達依頼を受ける頻度が減少しているように感じる。これは、高すぎるウーバーイーツ価格が招いた利用者側の「ココイチ離れ」ではないかと、危機感を抱いている。

ココイチが毎月発表している月次データにも、顧客離れの傾向が表れている。同社の客数は、2024年9月以降、9カ月連続で前年実績を下回っているのだ。これは、2024年8月に行われたグランド価格改定で、ベースカレーが平均10.5%(43〜76円)値上がりした時期と重なる。

このデータは、店舗での価格改定が客数に影響を与えている可能性を示唆している。さらに、ウーバーイーツのようなデリバリーチャネルでの極端な価格設定は、手軽さを求めるユーザーの期待を裏切り、「ココイチ離れ」を加速させる要因となっているのかもしれない。かつて多くの人にとって身近だったココイチが、今や特別な、あるいは「セレブ食」とまで揶揄される存在になりつつある現実が、この価格高騰の背景にあるのだ。