北朝鮮による拉致被害者家族会と支援組織「救う会」は東京都港区で合同会議を開き、今年の運動方針を「政府はぶれることなく『全拉致被害者の即時一括帰国』を実現せよ」に決めた。3日には神戸市出身の有本恵子さん(60)=拉致当時(23)=の母、嘉代子さんが再会を果たせないまま94歳で死去。高齢家族の切迫した実情がより浮き彫りになり、展望が見えない日朝交渉にも危機感は募るが、全被害者の即時一括帰国という原則を堅持した。
9日に開かれた会議の冒頭では嘉代子さんを悼み、横田めぐみさん(55)=同(13)=の母、早紀江さん(84)ら参加者全員が黙祷(もくとう)。会議に駆けつけた嘉代子さんの夫、明弘さん(91)は「涙が出る」と述べるにとどめ、解決に向けた政府の取り組みへの期待を重ねて強調した。
運動方針では、安倍晋三首相が「無条件での日朝首脳会談実施」を明言しながら実現していないことから、即時一括帰国の方針に疑問を呈したり、被害者の一部を帰国させる「部分的解決」案を呼びかけたりする主張も国内にあると指摘。一方で、厳しい制裁が北朝鮮を確実に追い詰め、拉致解決のチャンスは高まっているとし、「即時一括帰国こそが絶対に譲れない私たちの要求であり、その実現のためにこれからも戦い続ける」と訴えた。