政府が13日に決めた肺炎を引き起こす新型コロナウイルスに関する緊急対策は、感染拡大の阻止に向けた水際対策の強化のほか、自動車産業の操業停止や観光客の激減に苦しむ中小企業や小規模事業者を支える施策が並んだ。今年度末までに使い切る必要がある予備費を使い、緊急性の高い事業を優先させた。
新型肺炎の長期化でとりわけ懸念されるのが中小企業への打撃だ。政府は令和元年度補正予算で、中小企業対策に今後3年間で計3600億円を確保したが、これは産業機械の高度化などの経費で、新型肺炎に多くを充てるのは難しい。
そのため、今回の対策には新たに5000億円規模の資金繰り支援や雇用調整助成金の要件緩和を設けた。中国にある日系自動車工場の操業停止や国内拠点の減産による事業所の倒産などを抑える。裾野が広い自動車産業を下支えし、景気悪化への懸念を払拭したい考えだ。
地方経済の活性化に欠かせない観光産業も、感染の拡大で訪日客の減少が長引く可能性がある。昨年、中国からは約960万人もの訪日客が訪れ、国・地域別で最多を誇っていた。現在、中国政府は団体の海外旅行を禁じているだけに、キャンセルが相次ぐ旅館などの資金繰りを支援する。
感染防止策としては、マスクの増産や検査体制の拡充、検疫所の上陸審査の強化などのほか、抗ウイルス薬やワクチンの研究開発の促進も盛り込んだ。感染拡大が続くクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」などへの対応で連日検査と分析に追われ、民間企業と連携した研究開発に手が回らない現状を踏まえた。
政府は今後、新型肺炎の長期化に伴う自動車産業のサプライチェーン(供給網)への影響や個人消費の低迷など、経済への波及を見極めながら、4月以降、新たな対策を検討する方針。(小川真由美)