ウクライナ疑惑の弾劾裁判が終了し、トランプ米大統領の“強権”ぶりがあらわになっている。疑惑をめぐって自身に不利な証言をした証人への報復人事を実行したほか、ロシア疑惑に関する刑事裁判の量刑に“口出し”し、「権力の乱用」だとして野党・民主党だけでなく、政権内部などからも反発の声が出ている。弾劾裁判を無罪評決で切り抜けたのもつかの間、トランプ氏は新たな問題を自ら引き起こしつつある。(ワシントン 住井亨介)
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無罪評決から2日後の2月7日。トランプ氏は、ホワイトハウスのビンドマン陸軍中佐ら2人を解任した。ビンドマン氏は、弾劾訴追調査の公聴会で、トランプ氏が政敵であるバイデン前副大統領に関する調査をウクライナ政府に求めたと証言した人物だ。さらに11日には、軍当局にビンドマン氏への処分を求める考えも示した。
同じ11日には、2016年の前回大統領選でトランプ陣営顧問を務めたロビイスト、ロジャー・ストーン被告の裁判の量刑に口を出した。
同被告はロシア疑惑をめぐる議会に対する偽証罪など7つの罪で、首都ワシントンの連邦地裁の陪審から有罪の評決を受け、連邦地検が7~9年の禁錮刑を求刑していた。トランプ氏はこれを「不公平だ」とツイッターでの投稿で批判。司法省がその後求刑を取り消す異例の判断をしたことで、求刑に関わった検事4人が辞職するなどして裁判の担当から外れた。司法介入の疑いも浮上しかねない異例の事態となった。
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これに対して、民主党からは当然ながら大きな非難が巻き起こった。同党のペロシ下院議長は記者会見で「大統領は自身の政治的利益のために再び連邦の法執行をゆがめようとしている」と述べ、大統領選の同党有力候補の一人であるウォーレン上院議員も「政治的な友人を守り、敵を攻撃するために権力を乱用するのは、ロシアに匹敵する強権ぶりだ」とツイートした。