大阪府泉佐野市は25日、令和2年度の当初予算案を発表した。昨年6月に始まったふるさと納税の新制度が始まる直前まで、全国の自治体でも抜きんでた寄付額を集めた同市だが、新制度から除外されたことで、令和2年度予算案では一転して「ふるさと納税収入ゼロ」の予算計上を余儀なくされた。いつふるさと納税に復帰できるかも判然としない不利な条件に、幹部からは「無期懲役やないか」との声も上がる。
「教育への投資は遅れることなく進めたい。ほかもなるべく影響が出ないようにしたいが、見極めが必要だ」
泉佐野市の千代松大耕(ひろやす)市長は25日の記者会見でそう語り、ふるさと納税ゼロが続くことを前提に、財政運営を見直す必要性に言及した。
同市はふるさと納税に対する返礼品について「寄付額の3割以下」「地場産品に限定」とするよう要請した総務相通知に従わず、平成30年度に全国の約1割にあたる約498億円を集めた。総務省は通知内容を法律化した昨年6月からの新制度で「過度の返礼品で多額の寄付を集めた」として同市など4市町を除外している。
同市は決定取り消しを求め提訴したが、大阪高裁は今年1月、市の請求を棄却する判決を言い渡した。同市は今月6日、不服として最高裁に上告した。
同市があくまで国と争う姿勢を崩さない背景には、現状のままではふるさと納税復帰の見通しがつかないことがある。国側は「未来永劫(えいごう)に不指定にするものではなく、年数が経過すれば『著しく多額』の要件から外れる」としているが、その要件は判然としないからだ。
どうやら、国側は返礼品について「寄付額の3割以下」「地場産品に限定」という新制度の条件を守った自治体が平成30年度の1年間で集めた寄付額が最大50億円だったことから、この数値を上回った金額を「著しく多額」としているようだ。
一方、国側が新制度を定めるにあたって、判断の基準とした30年11月から昨年3月にかけて泉佐野市が集めた寄付金は約332億円。市の担当者は「もし年間50億円を『著しく多額』の基準とするなら、他の自治体が累計332億円を集めるまで7年かかり、その間は不指定が続く」とみて、今後の財政運営の悪化を懸念する。市の幹部の中には「無期懲役やないか」と嘆くものもいる。
市側は今後の法廷でも「いつから復帰できるのかは、総務省の恣意(しい)的判断に委ねられることになり、地方自治の侵害だ」と訴えていく方針だ。
泉佐野市予算案23年から続けてきた一般職の給与削減を令和2年度から元に戻すことなどから、同年度の人件費が前年度比8・3%増となる。また、社会保障費は民間保育所や障害者施設への支援事業などで6・3%増える見込みだ。
「耐えながら何とかやっていきたい」。千代松市長が会見で発した一言に、苦境がにじむ。