在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の対処方針が1日、判明した。日米交渉が夏頃始まるのを前に、政府が早々に対処方針の検討に着手したのはトランプ米政権が駐留経費負担で強硬姿勢を貫いてくると警戒しているためだ。今回の交渉はその警戒感からトランプ氏への対応策に終始するのか、それとも日米同盟深化に向けた協議に進化させることができるのか分水嶺(ぶんすいれい)となりそうだ。
「韓国に求めている内容を日本に当てはめると、こうなる」
実は、昨年7月に当時のボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らが訪日した際、駐留経費負担に関する日本政府への説明はそういう前提だった。具体的な要求ではなかったが、米外交誌が11月、思いやり予算を現行の1974億円の4倍以上にあたる約8700億円に増やすよう求めたと報じた。
ボルトン氏の説明に沿えば総額は8千億円前後になるが、積算根拠は定かでない。米側が思いやり予算をめぐる特別協定の交渉で8千億円前後への増額を求めてくれば、日本側は思いやり予算以外を含めた在日米軍関係経費の総額がすでに8千億円近くに上っていると切り返し、大幅な負担増は突っぱねる。
米側が作戦費の負担を求めてきた場合、思いやり予算の対象外だとして議論に応じない選択肢もある。ただ、ある日本政府高官は「労務費や光熱水費といった従来のカネだけの議論にとどめず、中国と北朝鮮の脅威に対処する自衛隊と米軍の一体運用を反映させる協議に進化させるべきだ」と強調する。
日米同盟のコストを単純にカネではなく自衛隊の運用で補っていく発想だ。米艦と米機の防護では十分とはいえず、日本が敵基地攻撃能力など打撃力の保有を視野に日米の「盾と矛」の関係の見直しに踏み出すことが「思いやり予算の改定を合理的に決着させる切り札となる」(別の高官)と指摘される。(半沢尚久)